ロ包 ロ孝 2
【ああ、考えていても仕方無い。そんな事より今は精進だ】

 林は自らを奮い起たせて、自分との闘いに気を吐くのだった。

「いちっ、にっ、さんっ、ふうぅ。いちっ、にっ、さんっ、ふうぅ」

 その身体から滝のように流れ出ている汗が跳ねて、野木村へ少し掛かった。

「ああっ! ミッツィーの飛沫が私にっ! シ・ビ・レ・ルゥ」

「ノギちゃん」

「なになに? ミッツィー」

 身体をくねらせ嬌声を上げる野木村に一言。

「やっぱり邪魔だわ」

 林はつれなく言い放っていた。


───────


「ノギちゃん。コマンダーからも言われたんだけど、やはりあの情報はかなり信頼が置ける筋からの物らしいんだ」

 野木村達が仮称『ブルー・ドルフィン』として行ったミッションは残念ながら不発に終わっていたが、民権奪還軍の上層部は網岡山にセンターコア・モノリス※ が有るという見解を譲らないらしい。

再調査依頼がひっきりなしに清水の元へ舞い込んで来ているようなのだ。

 林は当時ミッションに当たっていたメンバーを集め、ブルー・タスクの事務所でミーティングを行っていた。

「でもおかしいわねぇ。あの時は津々浦々迄見て回ったのよ?
 設計図とも照らし合わせてみて、構造的にもおかしな所は無かったんだからっ」

「鉄板1枚1枚、ビスの1本1本迄外してみた訳じゃ無いだろう?」

「そりゃそうだけど……」

 野木村は押し黙った。確かに今になって考えてみれば、モヤシ運搬ロボットに気を削がれ、それ以降の調査はおざなりになっていたかも知れない。

「仮定として上がっているのは『斜行エレベーターの角度かコースが変わっているんじゃないか』という事だ」

「それはどういう事?」

「つまり、本来のニュートリノ検知管を収めた水槽部分に通じる筈だったエレベーターを封鎖して、角度を緩やかに、或いは平行移動させて作り直す。それがたどり着く先がノギちゃん達が調査した温室だったんではないか、という見解だ」


※ 国連コンピューターネットワークのマスターCPU


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