ロ包 ロ孝 2
 カンは後ろ髪引かれる思いを断ち切る為にも、努めてアッサリと別れを告げた。これからだって、会おうと思えばこうしていつでも会えるのだ。

「うん。でもなんだか、カンの方が男らしくなったみたいね。じゃ、またねっ!」

 ジェイは大きく手を振ると、おしとやかに歩き出していた。


───────


「いよう! ねぇチャンここいらじゃ見ねぇ顔だな。俺と付き合わね……か?」

 晋は言葉を詰まらせ目を見開いた。

「えっ? じぇ、ジェイ?」

「あら、黒ちゃん。久し振りね! とはいっても3日しか経ってないけど、フフフ」

 おくれ毛を気にしながら斜に構えて答えるジェイに晋は震撼し、叫んだ。(ジェイだけは晋の事を『黒ちゃん』と呼んでいる)

「こりゃやべえ! また隕石が降ってくるぞ! ボスッ、ボスゥゥゥ」

 蠢声操躯法を使えない晋だったが、まるで【者】を使ったように高速で走り去る。

彼が上げた砂埃をしゃなりとオシトヤカにかわしてジェイは言う。

「あら失礼ねっ、せめて雪とかにしなさいよ」

 期待以上の反応を示した晋を見送って、ジェイは楽しくて仕方がないという風情で歩いて行った。


〇※○※○※


「ボスッ! ボスぅっ! 大変なんですっ」

 ドームイン東京に程近いアジトに慌てて帰ってきた晋は、いの一番にティーの元へと走っていた。

「………」

 ティーは液晶ペーパーを拡げ、墨刀一味の記事を読み耽っている。

「そんな落ち着いてる場合じゃ無いです。ジェ、ジェイが……」

「なにっ?」ドカンッ! バリバリッ ガシャン

 ティーは思わず声を出してしまった。その瞬間、自室にあつらえた応接セットが吹き飛び、晋は間一髪でそれをよけた。

『ジ、ジェイがどうしたって?』

 そう【闘】で聞かれた彼は、耳を押さえてのたうち回っている。

「ボッ、ボスッ! 落ち着いて下さいっ。違うんです」

『お前が落ち着いてる場合じゃ無いって言ったんだぞ!』

「うわぁぁっ、耳がっ頭がぁぁっ」

 遂に晋は床へ突っ伏してしまった。

『ああ、悪かった。黙っているから話してくれないか』

 ティーは極めて力を抜き【闘】を使った。


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