ﾛ包　ﾛ孝　２
「大方ボスがうっかり声を出しちゃったんでしょうね、アハハハ」

　ジェイは楽しそうに、しかし上品さは損なわずに笑っている。

みんなはその顔を、仕草を、穴が開きそうな程に見詰めていた。彼らは余りにも美しく変貌したジェイに見とれてしまっていたのだ。

しかし雷児だけは違った思いでジェイを見詰めていた。

【ボスがやったって、何でジェイさんは一目見て解ったんだ？　やっぱりボスの事をそこ迄把握してないと、No.2になるのは無理なのか？……】

　ジェイに図星を突かれたティーは頭を掻いて笑っている。雷児は暫く真剣な顔をして考え込んでいたが、突然叫んだ。

「ジェイさん！」

　彼女は目をパチクリさせて雷児に向き直った。

「どうしたの？　いきなり大きな声出して」

「なんだ雷児、ジェイに告る気か？」

　晋が囃し立てる。

「違うよ晋君。スイマセン。俺、ボスから次のNo.2になれって言われたんです。ジェイさんには言っておかないとと思いまして！」

　ティーは「また余計な事を……」と雷児に目配せしているが、彼は続けた。

「ボスはジェイさんが可愛くて仕方ないんです。これ以上危険な目に遭わせたく無いんですよ」

　ジェイは深く頷いていた。ティーの気持ちは痛いほど解っている。女の子の格好をしたジェイを見て、こんなに嬉しそうな顔をしているではないか。

「それは有り難く思っています。私もボスが大好きです、結婚したい位！
　でもそれは叶わなそうだから諦めます。ハハハ」

「…………。……」

　ティーの言葉を受け、ジェイは微笑みを一転、真剣な眼差しに変えて続けた。

「それだからこそ、最後にボスの力になりたい。せめて墨刀の討伐だけはやり遂げたいんです。あいつらは家族の仇でもありますから」

　そう言うとジェイは、ティーの返事も聞かずその部屋を辞していた。


───────


「女の子の服もいいけど、少しかたっ苦しくていけねぇな」

　暫くして戻って来たジェイは、ダレブに施して貰ったメイクも全部洗い流して、スッカリいつも通りの格好になっていた。


< 150 / 258 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop