ロ包 ロ孝 2
【俺は確かに額を撃ち抜かれた筈だ。あれは夢ではない。では何故今、俺は生きているんだ?】

「おい」ドンッ バリバリ……

「あ」スドッ ガラガラ……

「フッ」ドスン ドサッ カラン

 声を出す度に小屋は壊れ、遂には全てが只のガラクタへと成り果てた。

【俺は一体どうなってしまったんだ? 声がまるでコントロール出来ない】


〇※○※○※


【……あれから60年。思えばあっという間だった。里美が居ないこの世に嫌気がさして、最初の1年は3日と開けずに自殺を試みたっけ……】

 しかしティーは死ねなかった。

車に跳ねられようが電車に轢かれようが、瞬く間に再生してしまう。それどころか、再生する度に身体の活力は増して行くばかりだったのだ。

「ボスぅ、なぁにタソガレちゃってるんですかぁ」

 そう言う雷児の頭を軽く張り飛ばしながらジェイが囁く。

「馬鹿! ボスはな、俺達には想像も付かない程の辛い思いをして来たんだ。
 お前には思いやりってぇモンが無ぇのか!」

 雷児は頭を掻いて黙り込んだ。それを見てティーは、身振りで雷児とジェイを寄り添わせると言った。

『2人とも聞こえるか?』

 雷児はニカッと笑顔で頷いているが、ジェイは嫌そうにソッポを向いている。

『ジェイッ!』

「はいはい、聞こえてますよ、ボス」

『俺にも色々有ったがな、みんなもう昔の事だ。気にするな』

「はいボス。クンクン……でもジェイさん、良い匂いがするんですよぉ」

「んああっ! お前は犬か! 人の臭いを嗅ぐなっつうんだよっ!」

 ジェイは雷児を思い切り突き飛ばす。普段と変わらない2人を見ながらティーが微笑んでいると、そこにユウレイがやって来た。

「ボス……ああ、ここに居らしたんでやすか雷児さん」

「おっ、ユウレイ。お手柄の主登場だなっ? 田野倉さん、来てくれたぞ?」

 しかしユウレイは、その不健康そうに痩せこけた頬を更にげっそりとさせて言った。

「それが……その田野倉さん達なんですが、今行ってみたら……あの何でも屋、もぬけのカラだったんでさぁ」


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