ロ包 ロ孝 2
「え、そ……そんなっ」

 それを聞いた雷児は二の句が継げず、呆然としている。

「看板が無くなってたんでおかしいと思って中を覗いたら、事務所が空っぽだったんでさぁ」

『行き先は掴めないのか?』

 ティーの声は意外にも落ち着いている。

「へぃ、周りにも聞いてみたんですがサッパリで……」

『そうか……一応他にも当たってみてくれ』

 ティーが狼狽えないのには訳が有る。里美達に会える予感がしていたからだ。彼らは少ない情報ながらも、記憶を頼りにここ迄辿り着いたのだ。

【焦る事は無い。今の混沌とした状況を打開してからでも遅くないじゃないか】

 諸事情で何でも屋は畳んでしまったのだろうが、必ずこの近くに居を構える筈だという確信が彼には有った。

『ユウレイ、雷児みたいにジェイの耳にお前の耳を付けてみろ』

「へ、へい」

 申し訳無さそうに頬を寄せるユウレイに、ジェイは何も言わずに耳を貸す。

『お前達がそんなにがっかりする事は無い。俺が家族と会える日はそう遠く無いさ。
 そんな気がするんだ』

 ユウレイはジェイの耳からティーの声が聞こえるのが不思議なようだ。物でも扱うかのようにジェイの頭を撫で回して声の出所を探っている。

「おい、ユウレイ」

 堪らずジェイが呼び掛けた。

「あっ! ジェイさんすっ、スイヤセン。ついっ」

 頭を何度も下げる彼は、まるで棒のように全身を強張らせている。

「ちょっとジェイさん。俺だったらぶっ飛ばす癖に、随分扱いが違うんじゃないですかぁ?」

「お前はイヤラシイんだよ雷児」

「ちょっ、どういう事すか。俺は……」

 彼は明らかに動揺した。可愛くなったジェイを見て、今迄意識していなかった女性を感じてしまっていたのだ。

「土産物屋の仁美ちゃんに言うぞ? 雷児が俺に色目遣うってな」

「そ、それだけはご勘弁を!」

 雷児はその大きな身体を小さく丸めてジェイを拝み倒した。

「ははっ、でもボス。早く本当のご家族が見付かるといいですね……ッ!」

  バシンッ!


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