ロ包 ロ孝 2
「教えてくれて有り難う。やっぱり人間としての大きさがお前らとは違うわね、ミッツィーは!」

 それが自分の事のように顎をしゃくって威張っている野木村。そしておずおずと林の乗ってきたホバーモービルの後ろに跨がった。(ホバーモービルはその構造上、女座りでは乗れない)

「林さぁぁん」

 声を揃えて林に泣き付く山路と大沢。

「ほらノギちゃん、練習は? あいつらも困ってるぞ?」

 肩越しに後ろを振り返り林は尋ねた。

「実機に依る操縦訓練は終了。これからはスピード感を養う練習に変更よ?」

 事も無げに答える野木村。

「ま、いいか。ヨシ、じゃあしっかり掴まってろよ!」

「えっ? いいのっ? 一子(イチコ)幸せぇっ」

  キュルッヒィィィイイイン

 スターターがエンジンを一発で目覚めさせ、ホバーモービルのスカート部分が膨らむと、砂面から僅かに機体が離れる。

「発進っ」

  ドゴォォォォォオン

「ひぃええぇぇぇぇ……」

 アフターバーナーを一気に全開して飛び出したホバーモービルは、野木村の叫びと共に小さくなっていった。

「あ〜あ、み、見たかよ。凄げぇけ、ケツが下がってたな。お、重みで」

「野木村さん、林さんの操縦でぇぇ正気を保って帰って来れるのかなぁぁ」

 砂山には持ち主を待ちわびるサンドモービルが、ポツンと寂しげに残されていた。


───────


「死んだゎ? いや、今も生きている気がしないゎ? 私、ちゃんとここに存在してる?」

 3度程急坂を駆け降り、燃料補給の為に戻ってきた野木村は、指の先迄蒼白になっていた。

「一応生きてるんじゃないかなぁ、俺にはそう見えるけどぉ。なぁぁ大沢ぁ」

「でも口からエクトぷ、プラズム全部出ちゃってますけど。ダ、ダハハハハ」

 日頃の鬱憤を晴らすべく囃し立てる2人だが、野木村は為す術も無く只うなだれている。

「オシッコ漏れるかと思ったわ? ハァァァァァ……」

「ホントは少し漏らしちゃったんでしょぉ? ハァ ハァ ハァ」

 山路の間延びした笑いにも無反応だ。


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