ロ包 ロ孝 2
「ははは、よっぽどだったんでしょね」

 前回のミッションから暫くして、正式なブルー·タスクのメンバーになった西村が顔を出す。

 斜行している300mものエレベーターシャフトを、一気に砲撃を避けながら駆け降りるという離れ業を要求される今回のミッションには、抜群の運動神経と卓越した操縦技術が不可欠なのだ。

 昔はスキーのジャンプ競技が行われていたというここで、林達は猛特訓を行っていた。

「でも、考えてみたら林さんだけが飛び抜けて操縦が上手いんじゃまずいっしょ?」

「そうなのよ。援護するにしても、ある程度操縦技術がないとミッツィーに追従出来ないし……。西村はどうなの? そっちの方は」

 彼はマイクロマシンテクノロジーを研究している根っからの技術者だ。当然そういうバイタル面の活躍はあまり期待出来ない。

「いやあ、コッチの方は自信有るんですがね」

 腰をクイックイッと煽って見せる西村。呆れ顔の野木村はため息をつくと、自分のサンドモービル迄戻ろうと歩き出した。

「ああそうだ! 見て下さいよ。フライカメラ、完成したんです。凄いっしょ!」

 彼はマントを捲ると、大事そうに豆粒大の黒い機械を取り出した。

その豆にはフィルム状の羽根が4枚付いている。

「え? ホントに?」

 野木村は駆け寄って来て、注意深くそれを覗き込む。

「試作機7号です。見てて下さいよ?」

 これもマントの下から取り出した、アーム状の器具を肩から腕にカチャカチャと装着すると、彼はそのスイッチを入れた。

「航続時間は10分なんですが、最高速度は60km/h迄出せます」

 アームの先端に有る箱に付いたレバーを握ると、その豆粒は羽ばたき、瞬く間に上昇した。

  ブゥゥゥゥゥン

「野木村さんにも協力して貰ったアレ、モデルは蝿にしました。
 あそこ迄機敏には作れませんでしたけど」

 その羽音はスズメバチのように大きい。しかし少し鈍目の動きではあるものの、まさに蝿のような飛行だった。

「このコントローラーは蝿そのものを操縦するというよりも、蝿がどの空間に移動するのかを決める装置です」


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