ロ包 ロ孝 2
 マスク越しにも解る林の浮かない顔を見て、野木村は説得口調で言い聞かせる。

「ああ、解ってるよ、ノギちゃん。俺の中でも答えは出てるんだ。
 これが成功すれば、民権奪還史上でのマイルストーンとなるべきミッションだ。
 私情を挟んでいる場合じゃないよな、済まなかった」

 林は深々と頭を下げた。

「うん。解ってるならいいの。そうそうホラ見て? 西村、遂にやったのよ?」

  ブブッ ブゥゥゥゥウン

 メンバーの見守る中、試作機7号は縦横無尽に飛行して見せる。

「おおぅ!」「凄いっすねぇ」「さすが西村さんだ」

  ブブッ ブンッ

 それをピタッと砂地に着地させると西村は得意気に語り出した。

「最初はフライングカメラとして開発していたんです。
 鳩や烏、蚊やトンボ等も飛行モデルとして考えていました。
 蝿(=fry)がモデルだからフライカメラになった訳でして……」

 それを聞いていた山路が口を挟む。

「おおぉい、ちょっと待てよぉ? これを事前に突入させれば、コッチの被害を最小限に出来るんじゃないのぉ?」

「た、確かにそうだよ。これをまず完成させるのがせ、先決だよ」

 彼らがどう頑張っても、一朝一夕で林の操縦技術に追い付くのは無理が有る。山路、大沢の両名も些か及び腰になっていたのだ。

「そうか、そうだよな。一旦切り上げて作戦を練ろう」

 林の言葉を受けて、一同はホッと胸を撫で下ろしていた。


───────


「航続時間は10分だろ? 帰って来れなくて墜落したこれが、敵に見つかってしまうのでは?」

「ハハハ。それも考えて有りますよ」

 キュー氏からの援助は、西村にも恩恵をもたらした。彼はフライカメラの開発と平行して素材の開発も行っていたのだ。

「突入する機体にはこれを使います」

 西村が持ってきたのは腐臭漂う、プルプルと柔らかそうな物体だった。

「おぉい、なぁんだいこれはぁ」

 山路がそう言うのも無理はない。それはどう見ても腐った豆腐にしか思えなかったからだ。


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