ロ包 ロ孝 2
「しっ司令、栗原司令!」
「どうした。そんなに慌てて」
月コロニー群の中心に位置する国連軍コロニーで、若い参謀が声高に上官を呼び止めた。
「は、はい司令。センターコア・モノリスに、ネットワークからのハッキングが認められたんです。それがですね……」
PDAのページをめくりながら早口で捲し立てる参謀の肩に手を置き、諭すように語り掛ける。
「そんなのは日常茶飯事だろう、気に留める程の事でもな……」
「そ、それが違うんです。最終ゲートにアンノウンユーザーがアクセスした痕跡が残されていた模様です」
上官の言葉を遮って迄意見するなど普通なら考えられない非礼だが、鉄壁の守りを誇るモノリスに後一歩で侵入を許していたかと思うと、彼の心は焦りを抑え切れない程に粟立っていた。
「まぁまぁ落ち着け。モノリスの演算速度に追い付けるコンピューターなんか、この世には存在しないんだから。まぐれ中のまぐれだよ」
リラクゼーションスペースでソファに腰掛け、煙草に火を点ける。
スゥゥゥッ
そして深く煙りを吸い込んで吐き出した後、ユラユラと立ち上っていく煙を見つめながら付け足した。
「ましてそこでゲートが開いてしまったとしても、各ディモンに移行する度にセキュリティチェックとID照会が有るんだ。所詮『井の中の蛙』でしかない」
「ですが……」
彼が更に言葉を発しようとするのを手のひらで制し、胸ポケットから煙草を取り出すと、参謀に差し出す。
「まぁそう案ずるな。煙草でも吸ってみるか?」
「あ、ありがとうございます」
慣れない手付きで煙草をくわえると、差し出された火に顔を近付けた。
スゥッ……ゲホッ! ガホッゴホッ
「じ、自分には駄目みたいですゴホッ、昔の人は何が良くてこんな煙たい物を吸ってたんでしょうか」
彼が慌てて灰皿に押し付けると、上官と目が合った。
「あ、失礼しました。栗原司令の事では有りませんので……」
「いやいや、私だってこれ以上はない程の昔びとさ。しかしいまだに『生』への執着を捨てきれない『業』の深い人間だ」
「どうした。そんなに慌てて」
月コロニー群の中心に位置する国連軍コロニーで、若い参謀が声高に上官を呼び止めた。
「は、はい司令。センターコア・モノリスに、ネットワークからのハッキングが認められたんです。それがですね……」
PDAのページをめくりながら早口で捲し立てる参謀の肩に手を置き、諭すように語り掛ける。
「そんなのは日常茶飯事だろう、気に留める程の事でもな……」
「そ、それが違うんです。最終ゲートにアンノウンユーザーがアクセスした痕跡が残されていた模様です」
上官の言葉を遮って迄意見するなど普通なら考えられない非礼だが、鉄壁の守りを誇るモノリスに後一歩で侵入を許していたかと思うと、彼の心は焦りを抑え切れない程に粟立っていた。
「まぁまぁ落ち着け。モノリスの演算速度に追い付けるコンピューターなんか、この世には存在しないんだから。まぐれ中のまぐれだよ」
リラクゼーションスペースでソファに腰掛け、煙草に火を点ける。
スゥゥゥッ
そして深く煙りを吸い込んで吐き出した後、ユラユラと立ち上っていく煙を見つめながら付け足した。
「ましてそこでゲートが開いてしまったとしても、各ディモンに移行する度にセキュリティチェックとID照会が有るんだ。所詮『井の中の蛙』でしかない」
「ですが……」
彼が更に言葉を発しようとするのを手のひらで制し、胸ポケットから煙草を取り出すと、参謀に差し出す。
「まぁそう案ずるな。煙草でも吸ってみるか?」
「あ、ありがとうございます」
慣れない手付きで煙草をくわえると、差し出された火に顔を近付けた。
スゥッ……ゲホッ! ガホッゴホッ
「じ、自分には駄目みたいですゴホッ、昔の人は何が良くてこんな煙たい物を吸ってたんでしょうか」
彼が慌てて灰皿に押し付けると、上官と目が合った。
「あ、失礼しました。栗原司令の事では有りませんので……」
「いやいや、私だってこれ以上はない程の昔びとさ。しかしいまだに『生』への執着を捨てきれない『業』の深い人間だ」