ロ包 ロ孝 2
「個人的怨恨の線も否めない。まずは役員達の事情聴取から始めてくれ」
近頃月で多発している国連軍への襲撃未遂事件も、全てが未解決のままだ。
栗原はまたひとつ頭の痛い問題を抱えねばならなかった。
───────
「栗原司令。仰る通りに事情聴取と家宅捜査を行いました」
一週間後、地球から呼び寄せた緊急増員と共に、家宅捜索を終えた先日の士官が再び栗原のもとを訪れていた。
「うむ。で、どんな具合なんだ?」
「はっ、証拠の洗い出しはこれからなのですが……」
「それは当然だ」
「はい。あれから3日間に渡って聴取を先行致しましたが、全くそれらしい人物は浮上しませんでした」
栗原は少しホッとした様子で椅子に掛け直すと、タバコに手を伸ばしながら言った。
「まぁそうだろう。蟻の子1匹だって紛れ込むのは不可能さ。かと言って安心は禁物だがな」
しかし現に月各所で破壊工作が行われた跡も発見されており、彼らの言う所の反乱軍(民権奪還軍)が月にも存在しているのは確かだった。
「加えて逆に言うとだ。スペースウェイズだけが奴らの足掛かりなら、そこを押さえれば何とでもなる。恐るるに足りんよ」
しかし若い士官はこの時、言い様の無い危機感に襲われていた。磐石の体制を誇るここだけに、内部から攻められたら手の打ちようがない。
もしスペースウェイズに入り込むだけの能力が敵に有るなら、軍内部にスパイが潜入している可能性も否めないのでは無いだろうか、と。
「どうした。具合でも悪いのか? 顔色が優れないみたいだが」
栗原は精巧な彫刻がされた灰皿に吸い殻を押し付けながら、上目遣いに士官を覗き込む。
「いえ、何でもありません、大丈夫です。お気遣い頂き有り難うございます」
彼は【同僚を信じられなくなったらおしまいだ】と自分に言い聞かせる。
「では証拠の洗い出しに掛かりますので、今暫くお待ち下さい」
敬礼をして部屋を辞した彼は、これから行われる喧騒の中に身を紛らわす事で、自らを取り巻く雑念を払うべく奮起した。
近頃月で多発している国連軍への襲撃未遂事件も、全てが未解決のままだ。
栗原はまたひとつ頭の痛い問題を抱えねばならなかった。
───────
「栗原司令。仰る通りに事情聴取と家宅捜査を行いました」
一週間後、地球から呼び寄せた緊急増員と共に、家宅捜索を終えた先日の士官が再び栗原のもとを訪れていた。
「うむ。で、どんな具合なんだ?」
「はっ、証拠の洗い出しはこれからなのですが……」
「それは当然だ」
「はい。あれから3日間に渡って聴取を先行致しましたが、全くそれらしい人物は浮上しませんでした」
栗原は少しホッとした様子で椅子に掛け直すと、タバコに手を伸ばしながら言った。
「まぁそうだろう。蟻の子1匹だって紛れ込むのは不可能さ。かと言って安心は禁物だがな」
しかし現に月各所で破壊工作が行われた跡も発見されており、彼らの言う所の反乱軍(民権奪還軍)が月にも存在しているのは確かだった。
「加えて逆に言うとだ。スペースウェイズだけが奴らの足掛かりなら、そこを押さえれば何とでもなる。恐るるに足りんよ」
しかし若い士官はこの時、言い様の無い危機感に襲われていた。磐石の体制を誇るここだけに、内部から攻められたら手の打ちようがない。
もしスペースウェイズに入り込むだけの能力が敵に有るなら、軍内部にスパイが潜入している可能性も否めないのでは無いだろうか、と。
「どうした。具合でも悪いのか? 顔色が優れないみたいだが」
栗原は精巧な彫刻がされた灰皿に吸い殻を押し付けながら、上目遣いに士官を覗き込む。
「いえ、何でもありません、大丈夫です。お気遣い頂き有り難うございます」
彼は【同僚を信じられなくなったらおしまいだ】と自分に言い聞かせる。
「では証拠の洗い出しに掛かりますので、今暫くお待ち下さい」
敬礼をして部屋を辞した彼は、これから行われる喧騒の中に身を紛らわす事で、自らを取り巻く雑念を払うべく奮起した。