ロ包 ロ孝 2
「ちょっと! 何とか言って下さいよぉ、林さん」

 事務所の隅で皆の話を黙って聞いていた林に、情けない声で泣き付く西村。

「おいみんな! そりゃ西村くんが心細いだろうよ」

 林はやっと手にしていた調査資料から顔を上げて話の輪に加わった。

「ね、ね? 林さんもそう思うっしょ?」

「そんな物だけじゃなくて、もっと威力の有る火器を持たせてやらないと、なぁ」

「そういう事でなくて!」

 結局それ相応の火器搭載をした燃料補給用のサンドバギーを、武田が運転して同行する事で話は決まった。

「西村さん。俺の足を引っ張らないようにお願いしますよぉ?」

 声を裏返しながら明るい声で言う武田だが、その内容は結構キツかったりもする。

「こいつと一緒じゃ先が思いやられるっしょ!」

 思わず西村は溜め息を吐いていた。


───────


「ねぇ西村さんどおですか、この出来映え! ここまで細部に渡って岩波鈴羅(イワナミレイラ)を表現出来るフィギュア師が居ると思いますか?」

 武田のキンキンと甲高い声は明らかに神経を逆撫でするのだが、フィギュアの出来は絶品だった。

 夕方の時間帯に隔週でやっている『メタル創世記チュピルドリアン』のヒロインで、コアなファンからも絶大な支持を受けている彼女。

実は西村も密かに萌え心をくすぐられていたのだ。

「うううむ、シャクでは有るけど確かにフィギュアの出来は完璧っしょ。キカイものには無い生命力が有る」

 西村に『キカイもの』と言われた、今では当たり前の技術となっている感光樹脂による断層3D成形も、やはり人間の原型師の手による物とは明らかに違う(らしい)

「西村さん、なんですか! 意外と解ってらっしゃる」

「どうも『意外と』ってのが気になるけど……『チュピ』は2週に1度の生きる支えっしょ!」

 武田はその繋がった太い眉毛をピクピクと動かしながら西村に告げる。

「実は……最初に見た時、西村さんからは俺と同じ臭いがしたんだよなぁ。親近感が湧いちゃって、馴れ馴れしくしてすいません」


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