ロ包 ロ孝 2
 監視カメラに映らないよう注意しながら、フライカメラを彼らの風上に回らせて催眠ガスを発射した。

『なんだお前、勤務中だぞ?』

『え? なんですか? あっなんかいい匂いがしますね』

 音力のエージェント達がガスの臭いに気付いたようだ。本来のガスは無色無臭だが、このガスには淡い薔薇色と甘い香りが付いている。

『お前のコロンじゃ無いのか?』

 集音マイクで見張りの様子を聞いていた西村達は次の行動を取っていた。

「あの匂いに気付く位吸ってしまったらおしまいだ。さっ、次は穴開けの準備っしょ」

 西村達が工具の用意を始めると、音力エージェント達に変化が現れた。

「朝日が眩しくて、なんだか目を開けてられないな……」

「全身の力が抜け……て……」

 ドサッ ズサッ

 フライカメラに依って噴霧された催眠ガスは、音力エージェントの意識を奪い去った。黒ツナギの2人は、だらしなく地面に倒れ込む。

「よし今っしょ。ALCに穴を開けるぞ?」

 西村達は防犯カメラの死角に潜り込み、鉄筋を探査した。

「意外と細かく入ってますね」

「鉄線に当たると大きい音が出るから、穴を開けるならここしか無いっしょ」

 西村は慎重に穴開け位置を確認して、ドリルを回す。

  シュシュッ シュルシュルシュル

 人が囁く程の音を立て、ドリルの歯がゆっくりと壁に食い込んでいく。

「西村さん。もう開きましたよ、穴!」

「山路さんの懇切丁寧な指導のお陰だよ」

 西村はその穴に注意深くフライカメラを入れ込んだ。

「よぉし。飛んで行け! 武田は穴を塞いでくれ」

「え? カメラを回収しなくていいんですか?」

「穴に入れる事は出来ても、羽を広げた状態で飛んで出るのは不可能っしょ。可哀想だけど中で腐らせるしかない」

 西村は操縦装置をパソコンに繋げながらスロープ内のデータを取っている。

「うっわぁぁ、こりゃ大変だ。突入しなくて良かったっしょ!」

「俺にも見せて下さいよ、……うわっすげっ」


〇※○※○※


「行ってきましたよぉ! さぁ武田。材料は揃ってる、早速始めよう」


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