ロ包 ロ孝 2
 雷児は術が使えない他の仲間が心配だった。

「よしっ、突入するぞ。あくまでも最初はひとりひとりを確実に葬るんだ」

「声を立てさせず、静かにですね?」

 その問いに答えない代わりに、峰晴は大きく頷いていた。


───────


 ピッキングで扉を開けた2人は、まず先頭に立って店内に侵入した。仲間は少し距離をおいて待機させてある。

  ハァァァァア

 息を吐いた程度の音しかしない【列】を張りながら辺りを窺う。

ティーファミリーの操る蠢声操駆法は、大きな力が必要な時と最終奥義の【前】や【玉女】を使う時以外はほとんど無音である。

「やっぱり朝だから、奴らも眠ってるだろうな」

「ええ。まさか昨日の夜の仕返しが今日の朝とは、あいつらも思ってませんよ」

 そう言いながらも、彼らは用心して遊技場の奥に在る通用口を開けた。普段はバックヤード兼控え室の様に使われているであろうそこは、遊技場と比べても遜色の無い広さだった。おそらく、墨刀の組員全員を集めての会議にも使われているのだろう。

「しかし相当盛り上がってたみたいだな。ボスを殺したら、そりゃ奴らに取っちゃ目出度い事なんだろうが……」

 床に転がる大量の空き瓶と、元がどんな料理だったかも解らない食べ残し等で足の踏み場も無い状況を見回して、峰晴は更に怒りを色濃くしている。

自らの爪が肉を抉っているのに尚、拳を握る力を弛められずにいるのだ。

その指の間からはポトリ、またポトリと赤黒い憎悪で染まった液体が垂れ落ちている。

「す、すいません峰晴さん」

「なんだ、どうした」

 呼び掛けられて冷静さを装った峰晴が向き直る。

「いや、ジェイさんがボスは死んでないって言うんです」

「ああん? 俺はボスの残骸が炭になっていくのをこの目で見たんだぞ?」

 自分の言葉を信じない峰晴に、雷児はジェイから聞いた話の触りを振ってみた。

 まだジェイがNo.2になって間もない頃。僅かな不注意から、競合ファミリーに拉致された。その彼女が身柄を拘束された製鉄所へ、ティーが自ら助けに行った時の話をだ。


< 206 / 258 >

この作品をシェア

pagetop