ﾛ包 ﾛ孝 ２

「ああ、その話なら聞いた事が有る。俺のNo.2教育がなってないからジェイが拉致られたんだって、後でボスから散々ドヤされたよ。
　ボスの恩義に応えられなかった気がして、えらく悔しかった」

　峰晴は噛み締めるように言う。彼はその事を思い出して、ほんの僅かに眉根を寄せた。

「その時のボス達の詳しい状況、聞いてますか？」

　雷児は微笑み、上目遣いでにじり寄る。

「詳しい事迄は解らんよ。その時俺はもう会社員だったしな。
　なんだ雷児、気持ち悪りぃから勿体付けてないで早く話せ！」

　話し始めは柔和だった峰晴の表情が段々険しくなってきたのを見て、雷児は話の本題に入った。

「ああ、はい解りました。じゃ、これに」

　そこに転がっていた丸椅子に腰掛け、峰晴にもそれを勧める。

「おお、サンキュ」

　雷児はジェイに聞いた話を思い浮かべながら、声を潜めて語り出した。


〇※○※○※


『ジェイ、ジェイ！　大丈夫か？』

　引き渡し場所に指定された鉄工所へ駆け付けたティーは、長身の痩せた男に後ろから羽交い締めにされているジェイを見て、【闘】を使って語り掛ける。

　稼働はしていないのだろう、ティーの呼び出された第3溶鉱炉は薄ら寒い。照明も最低限しか点いていないのでかなり暗かった。

『ジェイ、俺だ。目を醒ませ』

　簡素な鉄骨階段を上がっていった先にある、溶鉱炉を操る端子盤が設置されたステージにジェイ達は居た。

眉間に皺を寄せ、眩しい時にするかのように目を細めて辺りを見回すジェイは、ティーの姿を見付けるとすぐに顔を輝かせた。

「！　……んんっ！」

　しかし猿ぐつわを噛まされていた彼女は、まともに声が出なかった。この状態では術も使えない。

『大丈夫か！　変な事されてないか？』

　微笑んでかぶりを振る彼女。確かに殴られたり蹴られたりはしているようだが、着衣の乱れはない。

ジェイはNo.2になった時に髪を切り、男として生きる道を選んだ。その天然パーマの掛かった赤い髪も、当時は短く切り揃えられていた。