ロ包 ロ孝 2
 それが彼女を男と勘違いさせているのだろう。と、ひとまずティーは安堵する。

一番の心配だった、ジェイが凌辱されているという事態には到っていないようだ。

『ジェイを、ジェイを放せっ!』

 ティーの発する【闘】の痛みに耐えきれず、長身の男は耳を押さえて踞ったが、「なんだどうした」またすぐ次の男が代わってジェイの自由を奪う。

暗闇に目を凝らして見てみると、どうやら6,7人は居そうな男達が皆、手に手に銃を携え、その小部屋1つ分程の鉄板で出来たステージにひしめき合っていた。

「ティーよ。こいつを返して欲しければ下手な真似はするなよ?」

 尊大な態度を取っていたスーツの男が、1歩前に進み出てそう言う。

 ティーは一瞬考えを巡らせて、その隣に居る小男に【闘】を送った。

『お前を通訳にする』

「ぐわっ!」

 ティーから【闘】を送られた当人は耳を塞いで転げ回ったが、構わず続けた。

『俺が話す通り、聞こえて来た通りに喋ればいいんだ。解ったら右手を上げろ!』

「グヮァァァアッ!」「おい、どうしたんだ」

 小男は襲って来る激痛に悶え苦しみながらも右手を上げた。

『くれぐれも余計な事は言うな。頭を吹き飛ばされたくなかったらな』

 ガタガタと小さい身体を震わせて、小男は何度も繰り返し頷いている。

「何なんだお前! 一体さっきからなにをやってやがるんだ」

 ティーの指示で動く小男を蹴り飛ばしているスーツの男は、部下の様子がおかしい事に苛立ちを感じているようだ。

「兄貴、恐らくアイツの声の所為ですよ。さっき俺もやられたんですが、何だか頭が弾けそうになる位痛むんですよ」

 最初にジェイを掴まえていた長身の男が、身体を屈めて耳打ちしている。

「そうか、畜生。アイツにも音力みたいな力が有るってのか?」

「どうやらそのようで……」

 ティーは通訳の男に向けて【闘】を使い語り掛ける。

『よし、喋るんだ。いいか? 私が通訳します』

 男は耳を押さえながら苦し気に絞り出した。

「兄貴。わた、わた……しが……通訳……しま、す」

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