ロ包 ロ孝 2
 自分の手下がいきなり通訳を買って出たので、スーツの男は狼狽(ウロタ)えている。

「なんだいきなり。どうしてあいつの言葉がお前に解るんだ!」

 兄貴と呼ばれたその男は手下の襟首を絞り上げ、尚も動揺してティーと小男とを見比べていた。

「すいません兄貴。でもアイツの声が聞こえるん……です。でも頭が弾けちまいそうに痛むんですよ。
 ぐわっ、まただ。またアイツの声です。
 アイツ……普通には……喋れない……そうです」

「はぁ、確か……お前の言葉はみんなNo.2に代弁させていると噂には聞いていたけどな」

 スーツの男は手すりから乗り出してティーをマジマジと見ている。

「テレパシーなのか、それ。超能力なんて作り話だと思っていたが……」

「そんなようなもんだと言ってます……そいつを渡す条件は何かとも聞いてます」

 ジェイを指差しながら言う小男は少しずつ慣れて来たのか、話すスピードが早くなった。

「ほう、流石ドームイン東京を仕切っているだけの事はある。随分物分かりがいいじゃねぇか。そうだな金か、利権か……」

 男は顎に生えた無精髭を擦(サス)りながら考えている。

「何でもいいから言ってみろ、欲しい物はくれてやるって言ってます」

 その狡猾そうな瞳を細め、僅かに口角を上げると男は言った。

「気前がいいじゃないか。じゃあ条件はな、ティーファミリーの、そうお前のシマ全部だ」

「! んーんー!」

 驚いてかぶりを振りながらジェイが暴れ出した。活性化に依って普通の女子よりは腕力も有るが、男の力には到底敵わない。

「んんっ! んんっ!」

  バシッ「いてっ! コノヤロウ!」

 しかし闇雲に身体を振り回していたジェイの肩が、脇で彼女を捕まえていたチンピラのアゴにクリーンヒットした。

『ジェイ、心配しなくても大丈夫だ。おとなしくしていろ。余りそいつらを刺激するんじゃない』

「小僧、舐めやがって!」

  ドスッ「グェェエッ」

 時既に遅く、みぞおちに拳を叩き込まれたジェイは床に倒れ込んでいた。


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