ロ包 ロ孝 2


「こんな話知ってる?」

 月コロニーの居住区にある一室で、1組の高校生カップルが楽しげに話している。そこは淡いクリーム色を基調とした内装で、隅々まで清掃が行き届いている。太陽光発電施設から豊富に供給される電力で、室内でも昼間の様に明るい。もっとも屋外に区分されている部分もコロニーの内部ではあるが、そこには人工風がそよぎ、プリズムで有害なスペクトルを取り除かれた太陽光が天井から降り注いでいた。

「ん? どんな?」

 月コロニー群は、巨大なドーナツ型の円盤を幾つも隣り合わせて配置し、建てられている。弱い月の重力を遠心力で補う為に、円盤は常に回転し続けていた。

「昔、日本のアサシンが隣国に侵入して李総書記を暗殺したじゃない?」

「ああ、表向きには二重スパイがしくじった事故って事になってるけど……」

「そうそう。それでね、その続きが有るのよ。聞きたい?」

 コロニーは月の丁度極点に有る。その周りには帯状に広大な太陽電池エリアが広がり、太陽電池パネルはコロニーに太陽を取り入れる為の反射板にもなっている。

「カン、一体どこから仕入れて来るんだ? そんな話」

「ふふ……聞くの? 聞かないの?」

「聞く聞く! 教えてくれっ」


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