ロ包 ロ孝 2
「ん? どうし……た?」

 スーツの男はジェイに股がったまま振り向いたが、頭がクルリと一回転まわって、また前を向いた。

「…………」

  ブシュウゥゥゥゥ

 男の首から夥(オビタダ)しい量の血液が吹き出し、ゆっくりと身体と頭がずれて、遂にはジェイの腹に落下した。

  ドスンッ「グェッ!」

 頭が落ちてきた衝撃で息を吹き返したジェイは、自分にのし掛かって痙攣している屍(シカバネ)を跳ねのけ、物陰に転がり込む。

「ひ……ヒェェェァアッ兄貴ぃ!」

 手下達はジェイに目もくれず、首の無くなった男の死体に縋り付いた。

「兄貴っ、兄貴ぃぃぃっ! ちっ畜生この野郎っ! ただじゃ置か……」

  パシュッ ドササッ

 威勢良くタンカを切ろうとして立ち上がった男の上半身が、胴体から離れて床に転がる。

 周りで唖然としてその惨劇を見ていた手下達だったが、そこから噴き出す真っ赤な血に洗われて、やっとスイッチが入った。

「やれ。やっちまえ! 奴の息の根を止めるんだ!」

「ヒィィィィ……奴は化け物だぁっ、逃げろっ!」

  パンパン パパンパンパン パンパン パパンパパンッ カチッ カチカチッ

 2人は一目散に逃げ出し、残った2人は弾が無くなる迄トリガーを引いた。しかしティーは倒れない。【列】の壁が銃弾を全て受け止めていたからだ。

「や、ヤツは不死身なの……」

「いや、音力と同じわ……ざ……」

  ボゴッ ザシュッ……ドサドサッ

 銃を撃った2人は全てを言い終わらない内にティーから攻撃されていた。

 【陣】に依って身体の中心線で真っ二つに引き裂かれ、濡れ雑巾のようになって手すりに引っ掛かった1人。その死体からは止めどなく血液が滴り、冷たいコンクリートの床に生温かい血溜まりを作っている。

【南斗】に依って腹の真ん中をくり貫かれ、茫然と立ち竦(スク)むもう1人。腹から吹き出る自らの鮮血を見詰め、震えながら暫く立っていたが、とうとう力尽きて崩れ落ちる。

「たっ、たっ、たっ助けてくギャァッ!」

  ビシャァッ!


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