ロ包 ロ孝 2
 そう言って通用口をくぐり、2人が第1溶鉱炉に入った瞬間だった。

  ドドドドォォォオ!

 ドロドロに熔解され、オレンジ色に燃えたぎった鉄が雪崩のように押し寄せてくる。

「ジェイ飛べっ! 【北斗】だっ!」

 ティーの発した地声に吹き飛ばされて、ジェイは上空に舞い上がった。

「ぼ、ボスッ! ボスゥゥゥッ!」

『ジェイッ! 墜ちるなぁぁあ……』

 ティーは全身から激しく炎を上げながら、どろどろに溶けた鉄の塊に飲み込まれていった。

「ハハハハ、ざまぁねぇ。ハハハ、ハハハハハハハハギャハハハハ」

 逃げ出した筈の男が気も狂わんばかりに笑っている。端子盤を操作して、溶けた鉄を流したのだ。

「自分の身体が燃えてるってのに、ボスは俺の事を気遣って……畜生ぉぉ、許さねぇ……。許さねぇぞっ! ダッ」

 【北斗】を使って上昇し、屋根を支える骨組みに掴まったジェイは、端子盤に居る男目掛けて【空陳】を放った。

「ギャッ、ギャァァァァ」

 頭上から放たれた【空陳】に弾かれ、熔けた鉄に落ちた男は、断末魔の叫びを上げながら黒い炭の塊になった。

「どうしよう……そうだ水だ。水を掛けなきゃ。ボスを助けるんだ シュッ!」

  カキンッ ガィィン

 壁を走る無数のパイプにジェイは力を込めて【陣】を放った。しかし表面に傷は入るものの、中々切る事が出来ない。

「シュッ! シュッ! シュゥゥッ!」

  ガキィン ゴキィィン!

 ジェイは諦めず、出来た傷に向かって、更に全力で【陣】を放ち続けた。すると、

  ズパッ ザザザザァァァ

 その一瞬、時が止まる。

  ……ッドガッガ! チュドォォォォォォォォォォォンォォォォンォォォン!

「キャァァァァァァ……」

 水が噴き出すのが見えたが早いか、ジェイは屋根ごと遥か上空に吹き飛ばされていた。


───────


「な、何?」

 【北斗】で姿勢を制御して何とか無事地面に降り立った彼女は、建物から300m程離れた場所で変わり果てた溶鉱炉棟を呆然と眺めている。


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