ロ包 ロ孝 2
「ここもそろそろ奴等の標的になったようです、司令」
「ううむ、遅かれ早かれそうなるのは予想していたが、こんなに早く訪れるとはな」
白髪の老軍人が、部下と思しき男としんみょうな顔付きで話し込んでいる。
コロニー群の中央に位置する、他のそれと比べて4分の1程のちいさい円盤がここ国連軍のコロニーである。
居住用の物には出入口が8箇所有るのが普通で、そのどれからも自由に出入りが可能だ。しかしここは脇に唯一作られている出入り口から中心部迄地下道が延びていて、そこから居住区である外周部へと至る経路しか侵入の手段は無い。
普通の物に比べて半径が小さいので、重力を同じ1Gにする為に周りのコロニーより早く回転して遠心力を増しているが、そのスピードが有事の際に容易く敵の侵入を許さない防御力ともなっている。
「司令、ここの守りは完璧です。心配要りませんよ」
「……そうだったな。歳の所為か、少々弱気になってしまったよ」
「何を仰いますか! まだまだ司令にはしっかりしていて貰わなければいけません」
「フフフ。解った解った」
老軍人は力なく微笑んで、グレーと黒でデザインされた軍服姿の部下を見た。折り目正しく着こなされたその姿からは、彼の若さが眩しい程に溢れている。
「若いっていいよな……」
部下に聞こえない程の小さい声で、老軍人は呟いていた。