ロ包 ロ孝 2
 その真っ白な、正方形に近い板を持った部下が1歩前へにじり出ると、桜木は憎らしい程落ち着き払った声で続けた。

「あなた方の術は我々には通じません。お疑いのようならお試しになってみますか?」

 歯噛みをしながら聞いていた峰晴は、堪らず激昂して叫んだ。

「んのヤロウ桜木! 何を四の五の抜かしてやがる。ジェイ、叩っ切ってやれ」

「黒ちゃんの仇だ、言われなくてもそうするよ! シュゥッ!!」

  ガリガリガガガッ!

 ジェイが水平に放った【陣】は、廊下の壁を真一文字に切り裂きながら、桜木達に襲い掛かった。

  ガリガガガガ ズズゥゥウン……

「やったか……?!」

「…………え?」

 しかし煙が晴れたそこに立っていたのは、不敵な笑みを浮かべたままの桜木達だった。

「クゥックックッ。この兵器は音力との小競り合いでその威力を確認済みなのです。
 音力より強力な術を使うとはいえ、あなた方の術は所詮『声』
 それは悲しいかな、儚い空気の震えに過ぎません。
 私達にあなた方の術は通用しませんよ。クウゥックックッ」

 桜木はその背中を醜く丸め、またさも可笑しそうに笑った。

「なんだ? 何で効かないんだ? シュッ、シュッ、シュッ!」

  バキバキッ! ガガガガッ!

 ジェイが全力で放った複数の【陣】は、復(マタ)しても桜木達の手前で次々とその効力を失った。

「こうなりゃ【前】だ! ぬうぅぉぉぉお」

 ジェイは未(イマ)だに信じられないという面持ちで力を込め始める。

  ビジジ バチバチッ!

 激しく閃光を放ちながら、彼女の体表を網の目になった放電が包み込む。

「止せ! こんな狭い所で【前】を放って、呼び戻しが来たら防ぎ切れないぞ!」

「そんな事言ってられるかっ! コォォォォォオ」

 彼女の周りを小さい竜巻が取り囲み、放電はより激しさを増す。

紙屑やスリッパや空き箱等の軽い物が舞い上がって、その竜巻に吸い寄せられていく。

「お前らしっかり何かに掴まってろっ! 吸い込まれるぞ!」

 峰晴達は晋の亡骸を庇(カバ)い、柱や階段の手摺を抱きかかえるようにしがみ付く。


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