ロ包 ロ孝 2
 廊下から扉越しに声を掛けてみたが、返事が無い。

「書斎かも知れんし」

 廊下を走ってそこに辿り着くとまた大声を張り上げる。

「爺ちゃん、イルカ? サメか?」

 しかし返事は無かった。

「出掛けたか。ダレブに聞いてみたら良かたい」

 しかしその場を去ろうとしたカンの耳が、微かに物音を捉えた。

 ガサガサッ

「う、ううぅむ」

「爺ちゃんっ! どした!」


───────


「カンのお陰で何とか命を繋ぐ事が出来た」

 天蓋付きの大きなベッドに横たえられた陳老人は、カンを見て微笑んだ。

陳老人はとうとう発作を起こして倒れてしまった。カンが気付いて医者を呼ばなければ、危ない所だったのだ。

「爺ちゃんまだまだ死んだらイカンて、神様の『煮干しメシ』ね」

「はは。思し召しだよ、カン」

 力無く言った彼だったが、途端にその瞳を炎と燃やして彼女を見詰める。

「しかしな、これでもっとカンにも力を貸して貰わねばならなくなった」

「任しといて! 頑張るよ」

 カンはベッドで横たわる陳老人の手を握り、笑顔で返す。彼が処置を受けている間中泣いていたので、その涙も枯れてしまったようだ。

「でも爺ちゃんは無理したらいかんぜよ」

「解った解った。お医者さんの言う事はちゃんと聞くから安心しなさい」


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