ロ包 ロ孝 2
 ジェイは悔しくて堪らずに拳を握り締め、唇を千切らんばかりに噛んでいた。

『特製コロッケをくれる総菜屋さんが有るだろう。あの2軒隣の古着屋が店じまいすると言って、俺の所へ菓子折り持って挨拶に来たんだ』

 悔し涙に暮れていたジェイは、ティーの言わんとしている事を理解し兼ねていた。他のメンバーもそれは同じだったようで、互いに顔を見合わせている。

ジェイ達は先を急ぐように次ページをクリックした。

『あそこの親父は腰を悪くしていて、もう商いからは引退して息子夫婦の世話になると言うんだ。

俺に、今まで良くして貰った礼がしたかったそうだ。

店はあの悪徳不動産屋から二束三文で買い上げられると言うから、俺がその3倍の金を出してやったんだ』

「そりゃ古着屋の旦那も喜んだでやしょうなぁ」

 ユウレイの言葉にみんなも頷いていた。

『その店を退職金代わりに、お前ら2人の物にして貰えたらと思ってな。

あそこはまだまだ人気も有るし、仕入れルートも紹介して貰った。2人でバンバン儲けて、たっぷり上納金を納めてくれ。

詳しい事は帰ってから話す。

                 草々

                  T』

「ボス……有り難う。でも黒ちゃんは……もう……」

「ボスは2人の将来の事迄お考えになってらっしゃったんでやすねぇ」

「晋くん。それなのに、なんで死んじまったんだよぉ」

 その思い掛けないティーの配慮は、若いマフィア達の新たな涙を呼んでいた。

「俺がぁ、事情をぅ、ティィさんにぃ、話しますよぉ。ああぁ、それに返事を書いて下さいよぉ。
 ティーさんに渡しますからぁぁ」

 山路はPDAを指差すと言った。若いマフィア達は我先にと返信を書き込んでいく。

「はいはい、ボスから呼ばれた順番通りにな。並んで並んでっ」

 奪い合うようにして書かれたメッセージは、ジェイが経緯をまとめて書き記すのを最後に、PDAへと保存された。

山路は早速それを携え、帰り支度を整える。

「じゃぁ、またぁぁ」

 そして軽く片手を上げるとサンドバギーに乗り込んだ。

「宜しくお願いします」

 彼らは山路のバギーから上がる砂煙が見えなくなるまで見送っていた。



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