ロ包 ロ孝 2
 彼らを救助した後、面倒な事にならないように警察と救急が到着するのを待たずしてティーは姿を眩ましたが、自分が骨折しているのにも関わらず妹『昭子』の心配ばかりしていた峰晴が不憫で、病院へ見舞いに訪れるようになっていた。

 何よりそうティーを動かしたのは、峰晴の途方もない強さだった。両親の死を始めに告げたのは他ならぬティー自身だったが、その時峰晴は取り乱しもせずにそっと目を閉じ、自らの境遇を受け入れた。そんな峰晴にティーはすっかり惚れ込んでしまっていた。

その後彼らに身寄りの無い事を知ったティーは、峰晴に身辺の雑事やファミリーの会計の仕事をあてがい、兄妹2人の寝所も与えてやった。

ファミリーの仕事をしながら覚えた蠢声操躯法にも並々ならぬ才能を発揮して、瞬く間にNo.2に迄昇り詰めた峰晴だったが、ティーは寝食を惜しんで勉強している彼の姿を偶然発見してしまったのだ。

峰晴の思わぬ向学意欲に驚いたティーは、知り合いの教授を招いて峰晴の実力を判断して貰う。

そこで「大学院レベルの工学知識が認められる」と太鼓判を押された彼に、善かれと思ってファミリーの仕事をさせていたのは誤りだったとティーは気付いたのだ。

『アコは、お前がヤクザな仕事をしているのを誇りに思っているとでも?』

「いや、でも……ボスから受けたご恩を返すのは、俺がこうしてファミリーを繁栄させる事だと……」

『それは充分果たしてくれたよ、峰。お前が来る前と今とじゃ、ファミリーの規模が10倍違うからな。
 しかし会計は専門家がやっているし、もうこれ以上の勢力拡大もやめようと思ってる』

 ティーは穏やかな顔で峰晴に向き直るとこう言った。

『はっきり言おう。お前は足を洗え』


───────


「そう言われて俺は、ボスに体(テイ)よく利用されたと思ってしまった。
 今迄有り余る程の恩情を賜って、そのお人柄にも一番近くで触れてきたというのにだ」

 峰晴はジェイの肩を抱え込んで、その赤み掛かったチリチリの髪をワシワシと手で掻き回すと彼女の顔を覗き込んだ。


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