ロ包 ロ孝 2
 峰晴の瞳を見返して何かを言おうとしたジェイの唇に人差し指を当てる。

「今迄受けてきた愛が大き過ぎて、それから離れたくないという自分のわがままが、俺にそう思わせたんだよ」

 そう言って峰晴は、ジェイにニッコリと笑い掛けている。

「ボスは結論から先に言うから、勘繰らなくていい所まで考えさせちまう。
 それが言ってしまえばボスの難点なんだよ、なぁジェイ。ハハハハ」

 結局ティーが苦労して就職口と兄妹の新居まで手配してくれていた事を知った峰晴は、ティーの厚情に甘える事にしたのだった。

「そのお陰でアコは、俺の妹は普通に結婚して、来年には最初の子供が出来るんだ。
 相手はアコが『マフィアの兄を持つ女』だったとしたら、当然結婚出来なかった良縁のご子息だ。
 本当にボスの恩には報い切れない。来世になっても返せない程だよ」

「峰さぁん、ウゥッ。グスッ」

 ジェイは胸につかえていた大きな何かが漸く晴れた気がして、峰晴に縋って泣いた。そしてその涙が涸れると、やおら彼に向き直る。

「峰さん。この度はボスと俺達の為に色々骨を折って貰って助かったよ。どうも有り難う。
 峰さんが居なかったら、とてもああは運ばなかった。感謝しています」

 ジェイは心を込めて、目一杯のお辞儀をする。

「でも今は俺がこのファミリーのNo.2だ。ボスの居ない今、ボスの意向は俺が守って行かなきゃならない」

「うむ、そうだな」

「だから峰さんは、今回の件には何も関係しなかった。みんなも良く覚えておいて……いや峰さんの事は忘れるんだ」

「おいジェイ。それは……」「はい、解りました」「みんな俺達の所為ですね?」「がってん承知でさぁ」

「解ったら峰さん。早いとこトンズラこいてくれよ。
 取り調べは俺達に任せな」

 峰晴は最早何を言っても聞き入れなさそうなジェイに、素直に従う事にした。

「おう、ジェイ。みんな。恩に切るぜ」

 峰晴はマントを脱ぎ、防寒インナーと共にたたむと、また自分のロッカーへ大事にしまい込んだ。

「だがこの峰晴、有事の時にはまたいつ何度となく駆け付けるからな。用が無くても顔を出すから、そん時は宜しくな」


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