ロ包 ロ孝 2
その頃月の国連軍コロニーでは、埋設ケーブルの取り替え一期工事が行われ、撤去した旧ケーブルの調査を終えた所だった。
「どういう訳かケーブルに異常は認められませんでした」
全長にして2kmにも及ぶケーブルのチェックを、1mずつ丹念に行ったチームのリーダーが首を傾げた。
「そうか、周辺のアナライジング·データはまだか?」
青いツナギの上から白衣を羽織っている、いかにも学者然とした男が現れてそれに答える。
「八嶋(ヤシマ)参謀、調査チームはもうじき戻ります。
それが見て下さい。停電が発生した時刻付近で、磁力線の異常が起こっていたんです」
月面の各所に設置されている無人観測所からのデータは、一様に地磁気の異常を示していた。
「これはつまり、どういう事だ?」
「強力な磁場に依ってケーブル内の電子の流れを阻害したのではないかと推測されます」
「そんなまさか!」
電流を止める程の強大な磁場を発生させる設備がこの月面に持ち込まれていた。そんな俄には信じ難い報告に、若い参謀は自分の耳を疑った。
「可能性として、サイクロトロンを使った素粒子砲の可能性も否めませんが、莫大な資金が必要になるでしょう」
「反乱軍にそんな財力は無い。そんな衛星を打ち上げたという記録でも残っているのか?」
「過去のデータを洗ってはみましたが、思い当たる物は有りませんでした」
若い参謀が思いを巡らせていると、揃いの青ツナギを着た数名がバタバタと騒がしく走り寄ってくる。