ロ包 ロ孝 2
「……なんですよ」

「ん」

「それにボス。最近音力の奴ら、やけにでかい顔をするようになってます」

「ん」

 裸電球が天井からたったひとつだけぶら下がった薄暗い部屋で、あの赤い髪の少女が話している。すると坊主頭の男が怒声を上げた。

「よぅよぅ! さっきから生返事ばかりじゃねぇか、このおっさんは」

「うるさい! 新入りの癖にチャチャ入れるな! 黙ってろっ」

 少女は可愛い顔に似合わないドスの利いた声で一喝する。

「お前もやっと下っ端から拾い上げて貰ったんだ。言葉に気を付けないとまた逆戻りだぞ?」

「ケッ。アンタだってこのおっさんの腰巾着じゃなかったらとうに……ぐえっ」

 男は最後迄喋る事が出来なかった。少女の口が何かを呟くと次の瞬間、腹を押さえて床に転がっていたからだ。

「お前、骨の一本も折られないと解らないらしいな」

 少女が前に出ようとするその肩を掴んで首を振る。ボスと呼ばれているこの男は、どうやら口がきけないらしい。

「すいません。こいつがあまりにも頭悪いんで……」

 口が何かを言うように少し動き、ボスと呼ばれた彼は少女を見てニヤリと笑った。

「そうですよ。俺の事をナメてやがるからやったんですよ! やっぱボスには敵わないや。
 おい、助かったな。おとなしく自分の席に座ってろ」

 少女から腹にキツイ一発を貰った男は、大きい身体をちょこんと椅子に乗せて畏まり、そして言った。

「すいません、ジェイさん」

「まぁ……解りゃいいんだ。それでお前ら、ちゃんと納めろよな! 誰のお陰でそのシノギにありつけてるのか良く考えろよ?」

「はい、解りました」「押忍」「了解」

 不揃いに発せられるその声に良く辺りを見ると、その暗い部屋にはかなり大勢のゴロツキ達が集まっている。

「こんなに稼ぎ易い所が他に有るのかよ、たったテンパーしか寄越せと言ってないのにお前らは……」

「すいません」「俺はきちんと納めてます」「有り難いです」「感謝してます」

 銘々が銘々にコソコソ喋り始めたので収拾が付かなくなっている。

「とにかくっ!」

  ピシッ!

 ジェイと呼ばれた少女がひと声発すると、部屋の空気が弾けた。

「イテッ」「ぉわっ」「つっっ」

「足りない分はどうにかしてでも持って来いよな」

「うぃ~っス」

「頼むぞホントに……」


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