ロ包 ロ孝 2
ギュァァァァアン
「おわっ! 危ねっ!」
大きなジェット音を轟かせ、林のサンドバギーの横を大型ホバークラフトが凄いスピードで追い抜いて行った。その煽りを受け、危うく転倒しそうになった林は急停車し、クラクションを鳴らしながらパッシングを繰り返していた。
「畜生、無視かよ! そうやっていつまでもデカイ顔をして居られると思うな! この糞ヤロー!」
林を抜いていったホバークラフトは、人々が言う所の特権階級を持つ者のみが搭乗出来るランドライナーである。
道路という道路が砂で埋め尽くされてしまった今、地上を移動する車両は車道を走っていた頃とは違ったルールで運行せねばならない。より高性能のセンサーや進路予測用の大型コンピューターを搭載出来る、大型船の方に回避義務が有るのだ。
当然それは安全な距離を取って行われるべきだが、サンドバギーやサンドモービル等の庶民が一般的に使用出来る車両は、彼らには取るに足らないゴミのような存在だった。
「いつか吠え面かかせてやるからなぁっ!」
林は中指を立てて叫んだが、その声は車中からでは当然届かない。もし外だったとしても、この砂嵐の中では5mがやっとだろう。
ふと彼が気付くと、そんなことをしているうちにサンドバギーが砂で半分近くまで埋もれていた。
「あわわっ、こりゃいかん!」
この極寒の砂漠で立ち往生してしまったら、人ひとりの力で脱出する事はまず不可能だ。林は慌てて、しかし極めて慎重にアクセルを吹かした。
ブルルルルンン
ほんの少しづつタイヤを回転させながら、ようやっとバギーがその全体を砂から脱する、と思った瞬間。
ブロッ プロッ ブルプスン……
「ワァァッ! エンストだっ……まだ脱出出来てねぇのにっ! だから水素エンジンは駄目なんだよ。モーターのが絶対いいんだって!」