ロ包 ロ孝 2
 彼はがっくりと肩を落として呟いた。

「映画じゃさ、俺達みたいな庶民の味方もそれ相応の軍備が有るモンだろうよ。それがこんなんじゃ、カッコ悪くてマンガにもなりゃしない」

 民権を奪還するという大願を掲げ、日々奮闘するレジスタント闘士としての自分と、実際置かれている現実の剰りにも大きなギャップをまた感じ、林は溜め息を吐く。しかし落ち込んでいる場合ではない。早く砂地から脱出せねばならないのだ。

  キュルルルル、プスンプスン

「掛かれ、早く」

  ギュキュルルルル、プスブスンプスン……

「頼む、掛かってくれ!」

  キュ、キュ、ルル、ルルル、ルル……

 バッテリーが残り少ないのか、セルモーターの回転が鈍ってきた。

「この野郎、スクラップにしちまうぞ!」

  キュルブロ、ブロウン、ブロロロン

 サンドバギーも、さすがにスクラップ屋へは行きたくなかったようだ。アッサリと息を吹き返していた。

「全くゲンキンなヤツだな、こいつも!」

 林がデリケートにアクセルを操り、やっと砂から脱出した時だった。

  ピリリリリッ

 耳をつん裂く電子音が鳴り響く。

「なにっ? 後を尾けられていたのか?」

 音力エージェントの接近を示すアラートに緊張した刹那。

  シュゥォォォォォ……

 砂嵐の荒野を、風切り音を上げながら2つの塊が通り過ぎて行った。

  ビュウィンッ ビュンッ  ビュゥィンッ

 黒メットに黒ツナギ、艶消し黒の大柄なサンドモービルに乗った音力エージェント達がその塊を追って行く。

「なんだ……俺が尾けられていたんじゃないのか」

 安堵したのも束の間、林は脳裏に浮かんできたあの物体の映像に、今更ながら興味をそそられていた。

「あれは確かに人だったよな」

 目にも止まらぬ速さで飛んでいたそれは、防塵マントをまとった2人の人間だった。1人は小さいマントから、か細い足も覗かせていた。

「子供だったか……いやまさかな。しかしどういう原理で飛んでたんだろう」

 ショルダージェットを背負っているでもなく、何かの乗り物に乗っているでもなかった2人。

 どんな罪を犯して追われていたのかは窺い知れないが、音力エージェント達をあしらうように飛び去った彼らに、ほんの少しの羨望と嫉妬を抱く彼だった。


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