ロ包 ロ孝 2
 ここは月コロニーに有るハイスクール。昼休みに話をしているのは新聞委員のカンである。彼女は短くし過ぎてしまったスカートを頻りに気にしている。

「ボブ、貴方はご家族が皆さんこっちでしょう? 私はお爺ちゃん夫婦が高齢だから、グラコロ※ 組なの」

「うん。前に休みが終わっても地球から戻って来なくて、長老からどやされてたもんな」

 カンに睨まれたロバートは、先へどうぞと身振りで促した。

「お爺ちゃんは管理の関係で日本の東京グラコロに居るのね?」

 彼はウンウンと頷いている。

「それで私は日本語専攻だし、生の言葉に触れたくて、皆の目を盗んで地上に出たのよ」

 カンは穴があく程見つめられている視線にも構わず話を続ける。しかしロバートが驚くのも当然だろう。月コロニーに移住出来る程の特権階級の人々に取って、地上とは飢えたライオンの群れに生肉の着物をまとって入っていく位に、危険極まりない場所なのだ。

「有名なフリースペースのドームイン東京にどうしても行ってみたかったのよ」

「単なる興味でかっ?」

 只でさえ大きいロバートの目は、あと少しでも開いたらこぼれ落ちてしまいそうだ。

「勿論そうよ。いいから聞きなさいって! 中に入ったらすぐ素性が知れちゃって……」

「当たり前じゃないか! ICチップを読まれたら一発だ!」

 すかさず突っ込むロバートをなだめながら、カンは更に続ける。

「そう、それは迂闊だったんだけど、あそこってマフィア内の規則がキチンと有って……窃盗や詐欺は良くても、強盗や誘拐、ドラッグや殺人なんかはご法度らしいのよ」

「へぇぇ、意外と紳士的なんだな」

「マフィアをやってて紳士的って言えるかは考えものだけど……ICチップの移植手術じゃ荒稼ぎしてるみたいだし」

 ふとロバートは思った。

「なんでカンがそんな事迄知ってるんだ?」

 話の腰を折られ続け、遂にカンはキレた。

「もう、ボブは話の盛り上がりとか伏線とか、ちっとも解ってないんだからっ!」


 ※地球に建設されたグランド・コロニー


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