ロ包 ロ孝 2
【地震……咲く? 作……自信!】

「オー! 降参ね。欲しがったのだけれど」

 彼はあくまで気のない素振りを装っているが、自作の売り物を誉めて貰えて嬉しそうだ。

「降参じゃなくて残念だろ? ほら、あんたには解って貰ったから、これやるよ」

 少年は勾玉がヘッドに付いた、シンプルなデザインのチョーカーを差し出した。

 それはその稚拙なアクセサリーの中でも、かなりマシな方だった。

「お有り難うございっ! 大変な嬉しがりようです」

「どこで習って来たんだ? その変な日本語!……」

 そう言ってまたカンに何の興味も示さなくなった少年をよそに、小躍りをしながら歩き出す。

「フフゥン、私の日本語ちゃんと通じたっ」

  すると二の腕をむんずと捕まれ、高揚していた気分は一気に奈落の底へと突き落とされた。

「ねぇちゃん。随分ご機嫌じゃねぇか」

 その男はマントも羽織らず、皮のベストと皮パンツだけで立っていた。

 しかし鎧のように盛り上がった筋肉と、熊のように生え揃った体毛とで全く寒そうには見えない。

「あー、何かをわたくしにご用事が有ってラッシャイますか?」

 カンは思い付く限り丁寧な(つもりの)日本語で質問した。

「そうだな。ねぇちゃんよりも、親御さんに用があるかな」

【オヤゴサン。七五三? 日本の風習、羽織袴? ……?】

 カンは皆目見当が付かない単語に戸惑っている。

「解らねぇのか? ぺぺ……ペアレントだ」

 その荒くれ男は恥ずかしそうに言う。カンの母国語はロシア語だが、簡単な英語なら勿論理解出来る。

「オー! 月にいらっしゃいます。そしてどんな?」

 カンはさすがにマズイと思い、辺りを見回していた。

 警官らしき姿は無いし、周りの誰もがカンと目を合わそうともしない。

【どうしよう……このまま誘拐されてしまうかも……】

  ドスンッ! バキッ

「グェッ! がほっ!」

 すると突然、男は腹を抱えてうずくまった。その怖れおののいた顔からは鼻血が垂れている。

「ジェ……ジェイ!」


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