ロ包 ロ孝 2
 言わば命の恩人から誘いを受けて、断わる理由など何もない。

カンはジェイの案内するまま辿り着いた、路地裏のひなびた喫茶店で一息つく事にした。


──────


「へぇぇ、新聞委員。俺はここ最近学校なんか行ってもいねぇから委員会活動とか、そんなのちっともご無沙汰だよ」

 ジェイの発音に慣れたカンはかなり彼女の言っている内容が解るようになり、単語もスルスルと出るようになったので、2人の会話は盛り上がっていた。

 でも先程から、時折自分の手元に送られるジェイの視線が気になっている。

「オゥ! ジェイ! 貴女も食べなさいよこれ、美味しいから」

「なっ、ば、馬鹿言うなよ。
 そんな軟弱な物喰ってるトコ見られたら、後でなんて言われるか!
 俺はドームイン東京を取り仕切るティーファミリーのNo.2、ジェイ様だぞ?」

 しかしそう強がってはいてもジェイはやはり女の子なのだ。カンが頼んだチョコレートパフェを、チラチラと恨めしそうに眺めている。

「じゃあジェイ、カンと勝負ね? 私ジャンケン知ってまーす。
 いいですかぁ? じゃーん、けーん」

 カンは何故かジャンケンが強く、仲間内でも最強を誇っている。

渋々出したジェイのパーをチョキチョキと切って勝利の雄叫びを上げた。

「ダー! ジェイ負けた罰ね? これ食べて!」

「勝負に負けちまったんだから、仕方ねぇよな」

 ジェイは辺りをキョロキョロと窺いながら、腕の中に隠してパフェを頬張り、瞬く間に平らげた。

「ジェイ、ニコニコ。美味しかったでしょ」

「ま、まぁな」

「ジェイ、ちょこっとチョコ付いてる」

「お前、洒落てる暇が有ったらもっと日本語勉強しろよ、ハハハ」

 話が盛り上がって気分も解れてくると、カンは沸々と湧き上がる記者魂に火が点いていた。

「ジェイとカン仲良しです。聞いてもいい事沢山ですか?」

「ああ、あんたやっぱりいい人みたいだからな。でも色々込み入った話で面倒だから、先に順を追って話してやるよ。別に隠す事でもないし」


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