ロ包 ロ孝 2
 ここ数年、同年代の女の子とまるで交わった事のないジェイは、カンとの時間が凄く楽しかったのだ。

普段は見せた事の無い、それは生き生きとした表情で語り始めた。しかしジェイが語ったその内容を聞いてカンは驚愕した。

 余り得意では無い勉強ではあるが、新聞委員をしている関係から社会や歴史には多少なりとも自信が有った。

勿論海鮮の総書記暗殺についても少しばかりの予備知識が有り、また音力や蠢声操躯法の事もおぼろ気ながら知っている。

ジェイに依ると、それら全てに彼女のボスが関係していたという。

二重スパイが起こした原爆の誤爆事故で総書記が亡くなったと言われていたあの事件は、全てボスの声ひとつが巻き起こした大惨事だったというのだ!

「ジェイ。でもそれ、もう60年も前の話よ? 貴女のボス、凄いお爺ちゃんだろ?」

 その時20歳だったとしても今は80だ。お世辞にも若者とは言い難い。

「それがな、うちのボスは限界を遥かに超えた発声をして、身体が超活性状態になっちまったんだ」

「ちょうカセーイ……」

「不老不死の身体だよ。歳を取らずに死なないんだ……」

「フローふしぃ? 死なない?」

 カンはもう一度ジェイの言った言葉を噛み締めてみたが、実感が湧かない。

「言ってみれば、健康的なゾンビみたいなもんだ! ハハハハッ」

 ジェイはそう言い放った後で口を塞いだ。そして静かに訂正する。

「いや違う。死なないんじゃない、死ねないんだ……ボスは自ら死を選ぶ事すら出来ないんだよ……」

 カンは急に沈んでしまったジェイを気遣って隣に寄り添ったが「大丈夫だ」となだめられて彼女の正面に座り直した。

「それにボスの発する言葉は全て攻撃になってしまう。だから【闘】でひとりにしか伝えられない」

「それ大変ね、可哀想……」

 お喋り好きで目立とう精神旺盛のカンには、その辛さが痛い程解った。

「そう、だから俺がボスの声の代わりをしてる。
 ボスは俺の命を救ってくれた恩人であり、先生であり、そして父さんなんだ」


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