ロ包 ロ孝 2
「ジェイ大変だった? 昔に何か有っただろ?」
「ああ……思い出したくもない事がな」
そう言うとジェイは、テーブルに身体を投げ出すように突っ伏した。
「ジェ、ジェイ。平気ですか?」
そのままの姿勢から顔だけ上げ、自分の指先を見つめながら言葉少なに語り出す。
「大丈夫だ。……ちょっと思い出しちまって……やり切れなかったのさ」
ジェイは沈鬱な表情をしていたが一転、そこに獲物を見付けたかの如く虚空を見据えて続けた。
「俺の両親は、兄弟は……」
ダンッ
テーブルに拳を打ち付けると、内臓を絞り出すように呟く。
「俺の……俺の目の前で殺されたんだ」
───────
その日はいつもより強い風が吹き荒れていた。それに伴って起こる磁気嵐で、低く垂れ込めた雲が怪しく光を放っている。
「順子。鍵は頼んだわよ?」
「はぁい」
ジェイ達の家族は今、買い物から帰って来た所だった。そう、順子の頭文字を取って、皆にジェイと呼ばせていたのだ。
言われた通りに鍵を締めて階下に降りていくと、テレビからはニュースが流れていた。それを見て母が言う。
「そうそう、この新興勢力のグループって、少数精鋭で紳士的なマフィアなんですってよ?」
「でも母さん。勢力争いで殺し合ってるんじゃ、紳士的も何も有ったもんじゃないだろう」
液晶ペーパーをつつきながら父が返している。
「なになに、何の話?」
ジェイが首を突っ込むと「子供は知らなくていい」とふたつ上の長男にたしなめられた。
「なによ! お兄ちゃんだってまだ子供の癖にっ!」
頬を膨らませて兄に食って掛かるジェイだが、全く相手にされないでいる。
ジェイの家は父が防塵施工の会社に勤務している事から、この時代にあってもまあまあ裕福な暮らし振りだった。
来年係属の私立中学に上がる兄と、やっと片言だが会話が出来るようになった弟に挟まれ、両親から沢山の愛情を受けながら何不自由なく生活していた。
しかし、それがいけなかったのだ。
「ああ……思い出したくもない事がな」
そう言うとジェイは、テーブルに身体を投げ出すように突っ伏した。
「ジェ、ジェイ。平気ですか?」
そのままの姿勢から顔だけ上げ、自分の指先を見つめながら言葉少なに語り出す。
「大丈夫だ。……ちょっと思い出しちまって……やり切れなかったのさ」
ジェイは沈鬱な表情をしていたが一転、そこに獲物を見付けたかの如く虚空を見据えて続けた。
「俺の両親は、兄弟は……」
ダンッ
テーブルに拳を打ち付けると、内臓を絞り出すように呟く。
「俺の……俺の目の前で殺されたんだ」
───────
その日はいつもより強い風が吹き荒れていた。それに伴って起こる磁気嵐で、低く垂れ込めた雲が怪しく光を放っている。
「順子。鍵は頼んだわよ?」
「はぁい」
ジェイ達の家族は今、買い物から帰って来た所だった。そう、順子の頭文字を取って、皆にジェイと呼ばせていたのだ。
言われた通りに鍵を締めて階下に降りていくと、テレビからはニュースが流れていた。それを見て母が言う。
「そうそう、この新興勢力のグループって、少数精鋭で紳士的なマフィアなんですってよ?」
「でも母さん。勢力争いで殺し合ってるんじゃ、紳士的も何も有ったもんじゃないだろう」
液晶ペーパーをつつきながら父が返している。
「なになに、何の話?」
ジェイが首を突っ込むと「子供は知らなくていい」とふたつ上の長男にたしなめられた。
「なによ! お兄ちゃんだってまだ子供の癖にっ!」
頬を膨らませて兄に食って掛かるジェイだが、全く相手にされないでいる。
ジェイの家は父が防塵施工の会社に勤務している事から、この時代にあってもまあまあ裕福な暮らし振りだった。
来年係属の私立中学に上がる兄と、やっと片言だが会話が出来るようになった弟に挟まれ、両親から沢山の愛情を受けながら何不自由なく生活していた。
しかし、それがいけなかったのだ。