ロ包 ロ孝 2
  ガッ ガコッ ガッ

 鈍い、金属同士がぶつかるような音がして、その平和な時間は破られた。

「なんだっ? 何の音だ?」

 すぐさま音のする方へ駆け上がった父は、血相を変えて戻ってきた。まだ鈍い音は続いている。

 ジェイ達家族は自家用ホバークラフトでショッピングセンターへ乗り付け、庶民には到底手が届かない食材やワイン等を買っていた。

その一部始終を強盗団に見られていたらしい。ならず者はジェイ達を尾行し、家族全てが家に入るのを見計らって今、侵入してきたのだ。

「ドアを破って入って来る! 子供をっ、子供を隠せっ!」

 何が起こっているのかも解らず戸惑う母に命じると、父は警察へ電話を掛けながら台所へ向かった。

いつもは温厚な父のただならぬ様子を見て全てを覚った母は、子供達を引き連れ、更に地下へ続く狭い階段を降りた。

そこは家の中を外気圧より少し高めにし、粉塵の侵入を防ぐプレコン(プレッシャー·コントローラー)とエアコン、ボイラー等が有る機械室になっている。

母はその部屋に隠れようとしていたのだ。

「さぁ、貴方達はそっちの隙間に隠れて! ここでお父さんを待つのよ!」

  バキバキッ ガゴッ! バリバリバリッ

 その時、一段と大きな音と共に賊が侵入してきた。

「なんだお前達! ん……があっ……!!」

  ドタンッ ガタン! ズンッ

 父が抵抗しているのか、床を踏み鳴らす重々しい音が上から聞こえてくる。

「ぁあぁぁっ!」

  パンッ

 乾いた破裂音がして、時が一瞬凍りついた。

「母さん! か、鍵ぃぃっ」

 その叫びを聞いて母は機械室の扉を閉めると、ドアをロックした。

「お父さんはっ? ねぇ、お父さんはどうしたのっ?」

 父の大声を聞き、隙間から這い出てきた長男が母に問い詰める。

「戻ってなさい! お父さんは剣道3段なのよ? 大丈夫だから! ちゃんと隠れてなさい」

 母はそれが拳銃に対しては何の役にも立たない事を知っていた。しかし気丈に子供達を叱咤する。


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