ロ包 ロ孝 2
「駄目だぁ! 行かせるか!」

  ドタン バキッ!

「おわぁっ! つっ。こっ、この野郎。死に損ないが、くたばれ!」

 父と賊が揉み合っているようだ。声は扉のすぐ外から聞こえてくる。

「あなたっ!」 パンッ

 母の叫びと同時に破裂音が響いた。

「グァァアアアッ」

 その声はまさに父が上げる断末魔の叫びだった。

「お父さんっ!」「あなたぁぁっ!」

  パンッ!

 そして間髪入れずに放たれた2発目のそれは、ドアノブの鍵を易々と貫き、ドアが開いた隙間から顔半分を血で真っ赤に染めた大男が顔を出す。

「きゃぁぁっ」「わぁっ!」

「おやおや、ここには羊ちゃんが何匹か隠れてるみたいだな。お前らのお父さんはな、オジサンが銃で殺してやったよ?」

 顔面を流れる血を舐めながら賊は続ける。

「でもオジサンは、お前らのお父さんから顔をこんなにされちゃったんだ。
 後ろからいきなりなんて卑怯だと思わないかい?
 お返しにお前らを、どう料理してやろうか考えてるんだ」

「させるかっ!」

  ブスッ! ドタン

「!!……このっ……ゴフッ、ウゲェェェ……」

 父は死んでなどいなかった。2度も身体を撃ち抜かれ、息も絶え絶えになりながらも彼は賊に飛び掛かり、その突き立てた刺身包丁は背中から男の心臓を貫いていた。

「はぁっ、はぁっ。みんな大丈夫か? こいつは父さんが……」

  パンパンパンッ

 しかし突然階上からもたらされた弾丸によって頭を吹き飛ばされた父は、声も上げずに横たわる。

「ぁぅ。パァパ……ネンネ」

 すると何も解らない弟がよちよちと歩き出したが、引き留める筈の母も、ドアの間近で眉間を撃ち抜かれて絶命していた。

「出ちゃ駄目だ!」

 長男が叫ぶ。

「遅かったかぁぁっ!!」

  ドカンッ!

 上で人の発する大きな声と、何かが爆発するような音が響いた。

「くっそぉぉぉ! 貴様らっ!」

  ドガッ! ドカンッ!

 大きい声の後に続いて、必ず爆発が起こる。まるで声その物が爆発物であるかのように。


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