ロ包 ロ孝 2
 そして空気を切り裂くような鋭い音がした。

  ヒュッ! ヒュンッ!

「……!……ぐわっ!」「オガッ!」「ひぃぃ! 奴が来た! 逃げろっ、殺される!」 

 賊共は後から来た声の主に恐れをなして、逃げ惑っている。

「畜生! こっちに来るなっ! このガキ共を皆殺しにするぞっ」

 しかし、怖じ気付いた賊は発作的に引き金を引いてしまう。

  パンッ パンッ

 機械室の一番奥に有る貯水タンクの陰から、ジェイは2発の凶弾に依って奪われる、幼い命達の最期をまの当たりにしていた。

その薄暗い機械室に、2人から出た鮮血が赤黒く拡がっていく。

「お兄ちゃ……ひっ、ヒィィィィ! ヒィィィィッ!」

「やや? まだ残ってる奴が居るなぁぁ?」

  バタンッ

 賊に入り口のドアを荒々しく全開にされ、ジェイは半狂乱になりながらも自らの終焉を感じていた。

  ヒュッ! パシュッ

「ッ!」

 すると再び空気が切り裂かれるような音と、水風船が破裂するような音がして、新たにドアからなだれ込んで来た男は真ん中から左右に分かれた。

  プシュゥゥゥウ! ピッ ピピッ

 男から上がった血しぶきがジェイの目に飛んで、彼女の視界は真っ赤に染まる。

  キィィィィン

 部屋の気圧が一気に下がったかのような耳鳴りに襲われ、ジェイは思わず耳を塞いだ。

 威力が有り過ぎる声だけに起こる【闘】の前波動だ。

『誰か、誰か居るのか?』

 その声はまるで、水に飛び込んだ時のようにジェイの全身に押し寄せた。しかも温かく彼女を包み込む。

『誰も居ないのか?』

 ジェイは返事をしようと試みたが、ヒューヒューと息が漏れるばかり。

 ふと、手元に有ったスパナを取ってタンクを叩いた。

  キンキンキンキンッ

『そこに居るんだな』

 声は静かな印象だが、その波動はジェイを容赦無く打ち据える。

  ギュッ キュッ ギュッ

 一歩一歩足音がジェイに近付いて来た。しかしその気配は彼女の警戒心をほどいていく。

『ああ、この子生きている』


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