ロ包 ロ孝 2
 その後紆余曲折を経て、キング·オブ·アンゴルモアで蔑ろにされてしまった民権を奪取する為、同志達と共に立ち上がったのだ。

音力のエージェント時代に、朝礼で必ず見ていた歴代ファウンダーの肖像。特にオペレーションを完遂した末に殉職という、伝説的な最期を遂げた初代の肖像は特別華々しく飾られていたので、最も印象深い人物だった。

「すいません。写真でいつも拝見してた方にそっくりだったんです」

 清水からそう謝罪を受けた男性はようやく安堵して椅子に掛け直し、石崎に向かって呟いた。それを受けて彼は言う。

「昔からその人に似てるってアチコチで言われてるみたいですよ? でも大きな声じゃ言えませんが……」

 わざとらしくカウンターから身を乗り出し、囁くように清水達に告げた。

「言えないけど何だ?」

 清水は苛立ち隠そうともせずに聞き返す。

「この人。ドームイン東京と、その周辺のマフィアを取り仕切るファミリーの首領(ドン)なんです」

「ドン? マフィアのボスか!」

「そりゃあ真逆に違いない!」と清水達は納得した。

「でも噂は聞いてますよ? 義賊のような紳士的マフィアだと」

 男性はなだめるような素振りで清水を制すると、石崎に向けて呟く。

「人から金を巻き上げるのが仕事だから、紳士には程遠いって言ってます。
 この人、喋れないんで俺が通訳してますけど」

 更に呟いた言葉を受けて石崎は付け加えた。

「何か困った事が有ったら協力してくれるそうですよ? 音力や政府は、彼に取っても天敵らしいので」

 また何かを呟いて、男性は清水達に会釈をして店を辞した。

「マフィアのボスとマスターが知り合いだったなんてねぇ。
 どうりで真っ当な商売をしてない訳だ」

 林はまだ狐につままれたような表情で言う。彼は何か喋っていないと、自分が何者なのか見失いそうになっていたのだ。

「真っ当な商売じゃないってどういう事だっ、あんたっ!……!」

 喰って掛かってくる石崎の言葉も、もう林には届かない。


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