ロ包 ロ孝 2


「お帰りなさいっ、ミッツィー! あのね……」

 野木村はその身体にまとわり付いた陰鬱な空気を瞬時に読み取り、口をつぐんだ。

 冷蔵庫からコーラを出し、氷の沢山入ったグラスに注ぐと、林の座ったデスクの端にそっと載せてやる。

「ああノギちゃん、有り難うな」

 口角を上げ、フンフンと頷いて野木村は自分のデスクに戻って行った。

「山路、こっちにいらっしゃい」

 そして何か言いたげに林を見ていた山路をすかさず呼び付け、仕事を与えている。

「かああっ! やっぱり旨いな。この一杯の為に仕事してるって感じだ」

 林は何かを振っ切るように溜め息を吐いた。野木村が副官たる由縁はここに有る。


───────


「早く! ノギちゃん。グズグスすんなっ!」

「おしりが引っ掛かってるのよぉっ! 私が来るなんて思いもしなかったから、この突入経路にしたのにっ!」

「ノギちゃんが来ないで、誰がロックを解除するんだよ! トラップだって満載だろうぜ?」

 まだブルー·タスクが立ち上げられて間もない頃、音力の保管庫に侵入して最新装備の情報を入手する特命が下された。

彼らが出動するのは5度目だったが、今回はブルー·タスクが単独で行う初めてのミッションだ。

音力の各種車両や特殊装備等を各地に配送する前に、一時保管している倉庫が東京の隣、埼玉の或る場所に有った。彼らは今まさにその中に居る。


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