ロ包 ロ孝 2
「ノギちゃん聞いてくれよ。なんかさぁ、コマンダーがマフィアと手を組みそうな勢いなんだよ」
深い溜め息をつきながらソファーに身を投げ出す林。その肩に手を乗せて野木村は何も言わず微笑んでいる。林が身体を起こすと野木村はしゃがみ、上目使いに言った。
「大丈夫よ。コマンダーにも考えが有っての事でしょ?」
「そうか。でも相手は罪人だぜ? どうしてそんなヤツから……いやいや、そうだよな。コマンダーの判断は、これ迄間違っていた例(タメシ)が無いんだ。
コマンダーを信じていればそれでいい」
『ギンコー』を後にしてからこっち、林の周りをベールのように包んでいた空気は、今度こそクリアに晴れていった。
「あれっ?」
「どうしたの? ミッツィー」
もやもやした気分が晴れて思考が鮮明になった林は、ギンコーを訪れた時の事を思い出していた。
【ガレージにサンドバギーを入れた時、そこにはマスターのど派手なサンドモービルしか無かった筈だ】
「あの人、何に乗ってあの店迄来たんだ?」
安堵の色を見せた途端、またしかめっ面で考え出した林を野木村が気遣う。
「どうしたのよぉ、ミッツィー!」
林は今回の顔合わせの事と、ギンコーで居合わせたマフィアのボスについて話した。
「そう。ドームイン東京を縄張りにするマフィアと言えば……ティーファミリーだわね」
キーボードをカチャカチャと弾いて野木村が言う。壁に大きく写し出された姿に、林は見覚えが有った。
「この2人がボスのティーとNo.2のジェイ。見ての通りジェイはまだ17歳の子供よ? メスだしね。うぅ~ぅん……でも、なんだか正体不明だわ?」
「ノギちゃん。俺この2人が空飛んでるの見た」
ギンコーで見た時はマントを着ていなかったので解らなかったが、この画像でティーが着ているマント、縁取られているこの模様とジェイが着ている原色の派手なマントには確かに見覚えが有る。
「ティーがドームイン東京を治める様になったのはここ10年の事で、その前の経歴は一切不明よ?」
関係記事に次々と飛びながらレポートを作成していくその指は、蜂の羽ばたきの如く目にも止まらぬ速度で上下する。
「はぁ、こんな物かしらね」
レポートを作成し終えると野木村は言った。