ロ包 ロ孝 2
「内情?」

「そう、内輪揉めみたいなもんだ。
 それでも初代統括ファウンダーから懇意にされていた二代目の時代迄はまだ良かった。
 だが、彼は大きな失敗をしてしまった」

 石崎はもう何杯目だか解らなくなっているグラスをまた、林の前に置いた。

「その失敗って?」

 話の先を早く聞きたい気持ちそのままに、コーラを貪り飲む林。

「ああ、国連軍の軍部に突然異動になった彼は、自分の後継者を育てられなかったのさ」

 栗原の穴を埋める為暫定的に就任した三代目は統率力に欠け、音力内で過去に有った『新派(ボイストレーニングに依る矯正で術を修得した者)』と『純派(素質のみで術を修得した者)』の抗争が再燃し、激化した。

 そうして音力の歴史に最大の汚点として残されている、新派と純派の『二十年戦争』が始まったのだ。

「決定的な実力差も無く、互いに拮抗していた両派は、ついに『関狩り』を始めた」

 林は目だけをギラつかせながら聞いた。

「つまり、その裏法を手中にする為にだな?」

「そうだ。その末に純派側に拘束された関さんは、自白剤の過剰投与で亡くなった。
 そして婆ちゃんも後を追うように……死んでしまったんだ……。
 音力の奴らは、俺の師匠も祖母も奪ったにっくき『仇(カタキ)』なんだよ!」

 石崎は歯をギリギリと喰い縛って怒りを堪えている。彼の音力に対する敵意は、ここから更に根強いものとなった。

そうして彼は、民権奪還軍に協力する一市民として、音力と戦うようになったのだ。

「……でもさぁ……そんな最強の子供だったマスターが、なんで今は只のマスターなんだ?
 俺達にその裏法を授けて、一緒に戦ってくれればいいのにっ!」

 石崎は「痛い所を突かれた」というような苦笑いを浮かべ、ガシガシと頭を掻きながら答えた。

「実はな……その後訪れた声変わりを機に、俺の能力は無くなっちまったんだよ。
 指導者としてのノウハウが無い俺には、とても一人前の術者を鍛える能力は無いし、実際に術を使って見せる事も出来ない俺に、術の伝授は到底無理な事だよ」


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