ロ包 ロ孝 2
 確かに、石崎の声は特徴の有るハスキーボイスだ。蠢声操躯法向きの声とは言えない。

「だが言うがな、只のマスターじゃねぇぞ? 俺にはまだ忍術が残ってるんだからな」

「ああ、情報収集では世話になってるもんな。ゴメン……声変わりかぁ」

 どうも林の態度は誠意に欠けている。石崎の眉が片方だけ上がり、気色ばむ。

 一方、暫く無言で考えていた林は、大きな溜め息と共に立ち上がった。

「はぁっ! 何だか……何が言いたくてここ迄来たんだか、解らなくなっちまったよ」

「帰るのか?」

「いや、今度こそトイレだ。コーラの飲み過ぎで膀胱がパンパンだよ、ハハ」

 小用に立った林は、1人便器に向かって自分の愚息に語り掛ける。

「お父さんはどうすればいいのかな」

 当然返事はない。

「自分の信じた道を簡単に曲げるのも男らしくないよな。お前は曲がり気味だけど」

 林は思い直して店内に戻って行った。顔には満面の笑みを湛えて。

「マスター! 俺、もう少しコマンダー達の事を信じてみるよ」

「ああ、そうしろ。俺ももう少し詳しく経緯を話してやるよ。何故ティーがこの店を訪れたのかもな」

 石崎はグラスをあおって空にすると、林に笑顔を返しながら言う。

「だがその前に、その全開になった社会の窓をなんとかシロ」

「あ、やべっ! な゙っ、はさんだっ! イダダダダダダダッ」

 慌ててチャックを上げた林の愚息は、皮の一部を挟まれ大変な事になってしまっていた。

「日頃から民権奪還軍への協力を惜しまないこの俺様を『只のマスター』呼ばわりしたバチだなハッハッハッ」


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