ロ包 ロ孝 2
「でね、ミッツィー。見付かったわよメカニック。
明日面接に来る予定になってるわ」
野木村は、林が戻って来た時に言い出せなかった事をやっと伝えた。
「それマジかよノギちゃん。なんで早く言ってくれないんだよ」
食って掛かる林をやんわりと受け止めて野木村。
「ミッツィーがドヨヨ~ンとした顔で帰って来るから、言いそびれたんじゃないの。それからすぐまた飛び出して行っちゃうし」
額を手のひらで打ち「シマッタ」という顔で林は言った。
「ゴメン。でももう大丈夫だよ。マスターんとこで息子をチャックに挟んじまった以外は」
「ええっ! 平気なの? そこは特に大事にしていて貰わないとっ!」
頬を両手で挟み狼狽えている野木村に、林は冷たく言った。
「ノギちゃんは可愛いと思ってやってるんだろうが、エドワード·ムンクの『叫び』みたいだぞ、それ」
「んまっ! 失礼しちゃうわねっ」
「とにかくもう遅いし、俺は寝るからな」
そう言って事務所の隅に数台置いてある仮眠用のベッドに身体を投げ出すと、瞬く間に寝息を立て始めた。
「うーん、ミッツィー寝顔も可愛いっ! んーマッ」
林は頬に大きなキスマークを付けたまま、深い眠りに落ちていった。
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ピロロッ ピロロッ
「ううんっ、あともう少し……んむ」
「ダメよミッツィー。そんな乱暴にいじったらぁ! 乙女の身体はデリケートなのよ?」
「ん? うわぁああっ!」
林は猛烈な悪夢と共に目を覚ました。
「まぁ大変! もうこんな時間だわっ。ミッツィー! ミッツィー? 大沢が迎えに行ったメカニックの彼よっ!」
林は野木村の大きな寝言に連られて、彼とねんごろになっている夢を見ていたようだ。
「ああぁぁぁ、ああぁぁぁ、なんて夢を見ちまったんだぁぁぁ」
今度は林がムンクの叫びになってオロオロ歩き回っている。
「あたしはいい夢見たわぁ~。ミッツィーったらワイルドなのよぉ。
ああ、ひたってる場合じゃなかったわ」
まだうろうろと落ち着かない林をよそに、野木村はインターホンに向かって言った。
「はい、どおぞぉ。大沢、案内してあげて」