ロ包 ロ孝 2
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「いや、大変失礼しました。もう一度言っておきますが、私にその気(ケ)は有りませんので」

「あら、別に隠さなくってもいいのに」

 頬にべったり付いているキスマークを見られてしまった林は、気まずい空気で面接に臨んでいた。

「ほら、ナマジも黙ってないで何とか言ってくれ」

 デスクに突っ伏して笑いを噛み殺していた山路は、堪え切れずに言った。

「ハァ ハァ ハァ、林さんはノーマルですよぉ。今の所はネェ」

 助け船を求めたのに今ひとつの答えしか得られなかった林は、山路を怒鳴り付けた。

「なっ! 『今の所は』ってなんだっ、後で覚えてろよ? カマジ」

「林さぁん、八つ当たりですかぁ? それにぃ、俺はカマじゃありませぇ……」「それはそうと給料なんですが、うちのグループはこれといったスポンサーがないので……」

 山路の返答を聞かずに話し出した林の言葉を、メカニック志望の男は遮った。

「いえ、私は民権奪還軍で働けるだけでも充分ですよ。それにあの沢山の武勲を成し遂げたブルー·タスクで働けるなんて、まるで夢のようです」

 フリースペースでまさかこんな有望な人材が、しかも一発で見付かるとは思ってもみなかった林は、小躍りして喜んだ。

「チップ抜きも済んでるし、素性も悪くない。さぁさぁ、早速見て貰いたいんだ。ささ、こっちへ」

  カンカンカンカンッ

 連れ立って階下に降りて行く2人を見ながら、大沢は眉をひそめて独りごちていた。

「……だ、大丈夫なのかなぁ。あ、あんな簡単に決めちゃって……」


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 作業場に降りていった2人はサンドモービルを覗き込んでいる。

「どうだい? 動きそうかい?」

 暫くあちこちを覗いて彼は言った。

「はっはぁ……解りましたよ林さん、これです。抜けてましたよ」

 彼は小林。ここに来る前は小さな自動車整備工場に勤めていたそうだ。彼に取ってみればこんな物は初歩中の初歩だった。

「これは何だい?」

「プラグのコードです。これじゃエンジンは掛かりません」

 そう言いながら小林は、それを所定の箇所に取り付けると、イグニッションを回す。

「あれっ?」

 しかしエンジンは動かない。

「どうした、小林君」

「なるほど。これ、そもそもバッテリーがあがってます。動かない筈ですよ」

 小林はエンジンを掛けたサンドバギーにブースターケーブルを繋いで、再びイグニッションを回した。


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