ロ包 ロ孝 2
  キュルッビィィィンィィン

 猛々しい雄叫びを上げ、水素ロータリーエンジンで駆動されるサンドモービルは難なく息を吹き返していた。

「良かったですね、大した故障じゃなくて」

 余りの喜びに、林の目には小林が輝いて見えている。

「凄いよ小林君! 君に後光が射して見えるよ。バンザーイ、バンザーイ」

「どうなの? ミッツィー。ほら、懐中電灯忘れてるわよ?」

 後光が射して見えたのは野木村が明かりを照らしていたからだった。


───────


「小林君は凄いよ! ノギちゃん。もう直ったよ、はははっ」

 林は意気揚々と作業場から事務所に昇って来た。

はしゃいだ勢いで野木村に抱き付いた彼は、抱き返された腕の逞しさで我に返った。

「はっ!」

 恐る恐る振り返ると、凍り付いたまま苦笑いを顔に貼り付けた小林と目が合う。

「ち、違うんだ小林君っ! これは断じて愛情表現なんかじゃない。男同士の友情なんだっ!」

 野木村はしなを作り、あさっての方に向かって言った。

「ミッツィー、下手な言い訳すると余計どツボに填まるわよ?」

「違うんだぁぁぁっ!」

 林の叫びは事務所内にコダマしたが、惜しくも小林の疑念を拭い去るには至らなかった。


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