ロ包 ロ孝 2
火薬の焦げるきな臭いニオイが鼻を突く。先程迄はこれでもかと集中砲火を浴びせて来た国連軍の攻撃が、ここに来てぴたりと止んでいた。
それはまるで、こちらが動き出す隙を窺ってでもいるかのような不気味な静けさだった。
そんな中、作戦本部に転がり込むように林が入って来て、小池に状況報告を行っている。
「小池さん。もう安心ですよ! 小笠原を連れて地雷を処理して来ましたから」
まだ民権奪還軍がグループに細分化される前の事。林は小池の手足となって、獅子奮迅の働きをしていた。
今回の戦闘では、退路に埋設された地雷群をいち早く察知し、部下の小笠原を連れ立って排除に当たったのだ。
「林」
「はっ」
「私は一先ず待機するように伝えた筈ですよね?」
「はい、しかし……」
何か言おうとする林を手で制して、小池は目を閉じたまま、静かに言い聞かせた。
「後30分もすれば援軍と爆弾処理班が到着するのです。経験の浅い小笠原がもしミスをしていたら、未来有望な部下を一度に2人も失う事になってしまう」
林は小笠原の才能を買っていた。それにその時は、30分の間に戦局が大きく変わるかも知れない危険を孕んでいたのである。
「はっ、しかしこの局面はですね……」
実際、退路が出来た事で民権奪還軍に取ってはこれからの展開がこの上なく有利になったのだ。
「解っています。よくやってくれましたね、2人のお陰です。しかし次からは先走った行動は控えなさい」
「……はっ、承りましたっ」
林は胸を張って最敬礼をし、いそいそとその場を辞した。しかし小池は、強張った林の表情を見逃さない。