ロ包 ロ孝 2
「高橋」

「はっ」

 呼び付けられた高橋は、小池の副官だった。彼にコーヒーのペットボトルを2本渡して言う。

「林と小笠原の所に行って、お前からも労ってやりなさい。承服し兼ねているようでしたから」

「はっ、承知致しました」

 副官の高橋は林の後を追っていった。


───────


「林の人を測る能力は並々ならぬ物が有りました。小笠原もそれからすぐ才能を発揮して、優秀な処理職人になりました」

 小池は目を細めて懐かしそうに語った。

「はぁぁ、でも林は小池さんのお心遣いを微塵も汲んでいませんよ?」

 小池はコーヒーを飲み終え、食器返却口へと向かいながら続ける。

「いいんですよ、私は少々細か過ぎる。林ぐらい大雑把な方がどれだけ楽だったか……」

 目を閉じて、暫し過去に思いを馳せながら付け加えた。

「それに、林は私の下では本当に良くやってくれていましたし、感謝もしているのです」

「はぁ、それをあいつに聞かせてやりたいですよ。僕は小池さんと働けて良かった!」

 小池は軽く頭を下げると言った。

「勿論、皆さんにも感謝しています。民権を奪還する事は、私ひとりでは到底なし得ない大願ですから。
 ……でも、林と働くのもまた違った楽しみが有ると思いますよ?」

 そう言われると彼は、後退(ズサ)りをしながらかぶりを振って答えた。

「いえいえいえ、まさか! あのでっかいオカマと林みたいなず太い恩知らずの下で働くなんて、願い下げですよっ!」

「ははは。彼は電子戦に掛けては右に出る者が居ない程のエキスパートです。
 うちの中野も頑張ってはいますが、助手2人と合わせてやっと張り合えるかどうかですから……」

 そのスタッフは、陰口になるような事を全く言わない小池の懐の広さに、改めて感慨を得ていた。


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