ロ包 ロ孝 2
  ガツッ バキャッ!

「ぐぁっ! てっ、てめえ! いきなり何しやがる!」

 最上段に獲物を振りかぶった男は不敵に笑って言う。

「お前、ティーの所の下っ端だろう。でけぇ図体しやがって、このうすのろが」

 突然殴り付けられたのは雷児(ライジ)だ。ストリートチルドレンだった彼はティーから仲間と共に拾われ、ファミリーの構成員になっていた。

「お前ら、墨刀のモンか? 俺様に手を出した事を後悔させてやるぜ」

 雷児は低く身構えると深く息を吸い込み、相手の返答を待つ。

「やべえぞ! こいつは術を使う、逃げろっ」

  ブワッ

 彼を襲ったチンピラが苦し紛れに撒いた砂が顔に掛かった。

「畜生、……砂が目に入って見えねえ」

 雷児がもがいている間にチンピラ達は我先にと逃げ出していて、彼は反撃する事すら出来なかった。

 ファミリーの中でも特にティーから信頼されている者は、表裏の蠢声操躯法を伝授され、幹部として組織に属している。

雷児は歳こそ若かったが、ストリートチルドレン時代に仲間を統率していた実績を買われ、年少グループの長となっていた。

「クッソー! 逃げられたか。
 痛っっあの野郎共、舐めやがって」

 殴られた頭から出た血は額を伝い、頬を流れて顎からポタポタと地上に落ちている。

「頭は派手に出血するからなぁ。しかし下っ端だとぉ? 俺はティーファミリーの雷児様だぞ?」

 怒りの収まらない雷児は、頭から流れる血もそのままに、いつの間にかアジトへ辿り着いていた。

「こ、これは一体どうしたってんです! ら、雷児さんっ!」

 門番をしていた若者が、血相を変えて駆け寄って来る。彼のあまりに慌てた表情を見て悪戯心がむくむくと首をもたげた雷児は、

「す、墨刀(スミトウ)のやつらにやられ……た」

 それだけ言ってガックリとうな垂れた。

「雷児さん! しっかりして下さい、雷児さんっ」

【ハハハッ、こんなに慌ててやんの、笑っちまうな。あれっ? なんだ? 本当に気が遠くなって来た。アレアレ?……あれぇぇ……】


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