ロ包 ロ孝 2
「だ、大丈夫です。全然痛くなんかありません」

 勿論雷児は痩せ我慢をしていた。ティーが発する【闘】は、それだけで攻撃に使える程の威力を持っている。

 頭蓋骨を振動させて声を伝える術の為、耳を塞いでも効果はない。寧ろ音波が耳から逃げて行かずに、余計苦しい思いをするだけなのだ。

『本当か? でも悪いな、これで精一杯なんだ』

 ティーと普通に会話するにはジェイのように、ただ慣れる事が肝心なのである。

「でも俺、一体どうなったんですか?」

『虚血性脳貧血だよ。止血もしないでウロウロしてたからだな。おおっ! そうだ。枕を使おう』

 ティーの声がいきなり強くなったので、雷児は頭を鈍器で殴られたような衝撃を覚えた。

「いでっ痛たた……」

 ティーはそこに有った枕を慌てて口へ当てる。

『わるい悪い。だがこれでどうだ? 少しはいいだろう』

 枕を通して少しくぐもった声にはなったが、耳の痛みは無くなったようだ。

「有り難うございます。それと心配掛けてしまってすいません。イダッ!」

 照れ隠しに頭を掻いた雷児は、爪で傷跡を引っ掻いてしまった。

『はは、アホ』

「痛いっす。また血が出て来ちゃいました」

『大丈夫だ。これでもかって位に輸血したらしいからな。お前の血液型ならまだストックが有る筈だし』

「へへへ。じゃ、遠慮なく血が流せますね」

『アホ。もうこれっきりにしてくれ』

「すいません。そうします。有難うございます」

 雷児はティーのさりげない思いやりに感動していた。

『しかし災難だったな。墨刀の奴ら、許せんな』

「最近は裏切る奴らも増えて、おちおち飯も喰ってられないんです」

 近頃頻発しているティーファミリー狩りに依って、彼らはドームイン東京の縄張りを脅かされていた。

 彼らティーファミリーがショバ代として徴収している売り上げの10%は、ゴロツキ共に取って安い物では有ったが、売り上げ額的に旨味の有るドラッグや誘拐、抗争や殺人等を禁じられている為、窮屈に思っている輩も少なくはなかった。


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