乱反射するプリズム
ふゆ
季節はいつの間にか冬になり、12月。街が綺麗に彩られていくのを私は溢れんばかりのカップルの中、寂しさを紛らわすため歩きながら目で追っていく。

赤、黄、青に緑と様々な電飾。それらは街を活気づけるだけでなく、カップルを祝福するかのように照らす。温かな光、幸せそうな光。今の私にとってはただの羨望の的にしか映らない。

ああやって、手をつないで、肩を寄せ合って、歩幅を揃えて、とても楽しそう。なのに私ときたら、ああ、なんて寂しい。ポケットに突っ込んだ手が冷たい。首もとに巻かれた安いマフラーは生地が薄く、風が私の首をかけていく。


はやく、帰ろう。なんだか空しくて、そんなことを思った。カップル達が光なら、私は陰だ。下を向いて、足早に歩みを進めていく。クリスマスを意識したラブソングも私を物珍しそうに見るカップル達も、今は気にならない

今はただちっぽけなプライドと空しさが足を動かしていく。周りなんか、気にしない。カップルなんか、嫌いだ。小さく呟いた。吐き出して、自分の小ささを実感する。ああ、だめだ。自分の悪い、くせだ

溜め息をつく。すると不意に声をかけられて立ち止まる。顔を上げると、サンタの仮装をした売り子の男性がケーキの箱を持って立っていた

「あの、ケーキいかがですか?」

栗色の髪、端正な顔立ち。茶色の瞳が私を見た
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